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おとぎばなし
「食いしんぼうのトーリは、妖精さんのご馳走をパクパク食べてしまいました」
アンナは来年小学校へ入学する息子のアーサーに、最近流行りの児童文学を読み聞かせている。
「勝手に食べちゃダメなんだよ!ボク知ってる」
最近のアーサーは、何度も聞いて覚えた内容を自分から先に話すようになった。
アンナは隣に座る息子の柔らかい髪を優しく撫でてやった。
「ボクならねぇ、ちゃんと家の前で妖精さんが帰ってくるのを待って、食べ物を分けてくださいって言う」
「そうね。アーサーは賢いわね。じゃあもし逆に、お腹が空いている人がいたら、アーサーはお菓子を分けてあげられる?」
そう問うと、アーサーは「お菓子かぁ……」と一瞬悩む素振りを見せたあと、「うん!」と元気よく答えた。
アンナは「このまま優しく育って欲しい」と心の中で願いながら微笑んだ。
「ねぇママ、明日は友達と公園へフットボールしに行ってきても良い?」
「良いけれど帰りは寄り道せずに帰ってくるのよ。森へは絶対に近付いてはいけませんよ」
END
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