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妖精達
ここは、世界の西に位置する森の中。
不思議なことに、この森ではずうっと昔から霧がたち込めて晴れたことがない。
その森の霧の中から楽しげな歌声が聞こえてくる。
「ご馳走♪ご馳走♪今日はご馳走♪」
「水玉キノコのたっぷりスープ♪」
「苔と綿毛のフカフカケーキ♪」
「木いちごこんもり焼きたてパイ♪」
「ご馳走♪ご馳走♪今日はご馳走♪」
背の小さいのや大きいの、羽根が生えて飛んでいるのやフサフサの尻尾が生えているの。見た目もカラフルで賑やかな一行がたどり着いたのは、赤い屋根に黄色い壁のお家。
水色の玄関扉が開いて、ゾロゾロと中へ吸い込まれた彼等はこの家の住人達だ。
一番最初に入ったのは、緑色のとんがり帽子を被った小人。ぴょんぴょんと跳ねるように歩きながらダイニングテーブルへ辿り着くと異変に気付く。
「ややっ?」
ぴょんぴょん歩きがピタと止まり、すぐ後ろにいた金色の蝶のような羽根を生やした女の子が、とんがり帽子の小人にぶつかる。
「ちょっとリーキ。急に立ち止まらないでよ」
「キルシュ、テーブルを見ろ」
キルシュと呼ばれた蝶のような金色の羽根を持った女の子がリーキの左後ろから顔を覗かせてダイニングテーブルを見た。
「まぁ大変!シュクレが泣いちゃうわ」
キルシュが小さな両手を口に当てると、その後ろからぽっちゃり丸顔、リス耳の男の子が顔を覗かせた。
「僕がなんで泣くの?」
シュクレは尋ねながらテーブルの上を見て目を丸くする。フサフサ尻尾をブンブン揺らした。
「……ねぇレフェフリータ、タルト、今日は僕の大好きな水玉キノコスープを作ってくれたって言ってたよね?ご馳走ができあがったから僕たちを呼びにきてくれたんだよね?」
その言葉を聞いて、更に後ろにいたヒョロリと背の高い、学者のような帽子を被ったレフェフリータが黙って頷いた。
レフェフリータの肩には赤いドレスを着たキノコサイズの小さな妖精が乗っている。
「そうよ。今日は特別美味しくできたんだから、突っ立ってないで早くテーブルに……ってえぇえええ!?ご馳走が、無い!」
タルトと呼ばれた小さな赤いキノコの妖精は驚きのあまり、レフェフリータの肩から転げ落ちそうになった。
すんでのところでレフェフリータが受け止めてそのまま両手で優しくタルトを座らせてあげた。
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