夢なら

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夢なら

 トーリはもうとっくに目が醒めていたけれど、起き上がるタイミングを失っていた。  薄目を開けて見ると、ベッドを取り囲む面々は出来の良い人形劇の人形のような奇妙な姿形をしている。  彼らはどうやら人間ではないらしいことはわかった。  そしてトーリは、ある結論に至る。  今は夢の中で「これは夢だ」と気付いたパターンだと。 (そうと分かればあとは夢から醒めるだけだ。けれども、現実に戻ったところでもう帰る場所もない。しばらく夢のまま醒めなければいいなぁ)  そんなことを考えながら、トーリは意を決して起きあがった。  妖精達の注目を浴びる。  どうにも彼らはそれぞれに、現実世界には存在しそうにない姿形だけれども、今、この場で異物なのは自分であることに違いない。 「あの……皆さん、こんにちは。初めまして。私はトーリといいます」  この家の扉を叩いた時と同じように自己紹介した。 「トーリ、ですって」  学者帽を被ったノッポの手のひらに乗る小さな赤い妖精が、確かめるように復唱した。 「俺はリーキ」  と、緑のとんがり帽子の小人。 「私はキルシュ」  と、金色の蝶の羽を持つ美しい妖精。 「僕、僕、シュクレです」  涙声で言ったのは、リスの耳と尻尾を持つ丸顔の男の子。 「彼はレフェフリータで、私はタルトよ」  二人分紹介してくれたのは小さな赤いキノコの妖精だ。 「繋がった」 「輪になった」 「トーリはここの仲間だ」 「じゃあトーリもここで永遠に一緒に楽しく暮らしましょう!ここには、しかないのよ」 「でもご馳走がないよ。、だよ」  シュクレの言葉を聞いて他の皆んながハッとなってトーリに非難の目を向ける。 「あの……私はお腹が空いて死にそうだったので、テーブルのご馳走を勝手に食べてしまいました。ごめんなさい」  謝るトーリに、リーキが目をつり上げて指差す。 「そうだった!こいつはご馳走を勝手に食べたドロボウだ!」 「以外を持ち込んだ!」 「それについては謝ります。私は森で迷って、とてもお腹が空いていたのです。本当に申し訳ない。代わりに何かできることがあればお手伝いします」  トーリがそう言うと、妖精達は何やら相談し始めた。 「輪になったからには、レフェフリータと同じようにここに置いてあげる。でも一生懸命に作ったご馳走を勝手に食べて、私たちにを持ってきた貴方には罰を受けてもらうわ」
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