離れた時間を埋めていく

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 幕張から電車に乗って別の街に行き、小綺麗な居酒屋に入った。店内は混んでいたけれど、幸いカウンターが二席空いていたのでそこに通され並んで座る。 「生ビールで」 「あ、私も」  そう言うと悠李はちょっと目を丸くして私を見た。 「当たり前だけど月葉も酒飲むんだよなあ」 「当然でしょ。いくつになったと思ってるのよ」  でもその気持ち私にもわかる。15歳だった悠李が、急に28歳に成長して目の前でビール飲んでいるんだもの。まるでタイムスリップしたような気分だ。 「それにしても随分背が高くなったね」 「高校に入ってから伸びたから。中学の頃は月葉とほぼ同じだったもんな」 「そうだったよね。でも、声は変わってない。あの頃と同じ、ちょっと高い声」  すると悠李は少し頬を赤くして口を尖らせた。 「うるせえ。コンプレックスなんだよ」 「え、そうなの。ごめん」 「いや、月葉に言われるのは別にいいんだけどさ。この体格でこの声はイメージに合わないって、大学以降会った奴には必ず言われる」 「身長高くて逞しい感じだから、低い声だろうって勝手に思われちゃうのかな?」 「た、逞しいっ……? 俺が……?」 「うん、そう思ったんだけど……」  悠李はますます顔を赤くした。身体のことも言っちゃいけなかったのかもしれない。今の時代、デリカシーのない発言だったな。気をつけなきゃ。  それからお酒が進むにつれて同級生の話などで盛り上がり、気がつけばお互いいい感じに酔っぱらっていた。といっても私は強いほうなのでまだ全然平気だけど、悠李はなんだか目がトロンとしている。 「大丈夫? そろそろ帰ろうか、悠李」 「んー。そうだね。そうしよっか」  ヘラっと笑いながら悠李が伝票を持ち上げる。 「あ、私も払うからね。ちゃんと割り勘にして」 「いいよ。俺が誘ったんだし、俺に払わせて」 「それじゃ私が気持ち悪いから」 「じゃ、次会った時に奢ってくれたら嬉しい」  にこっと笑ってレジへ向かう悠李。次……って、また会うつもりなんだろうか。 (私はこれっきりのつもりだったんだけどな……)  先に店の外に出て待っていると笑顔の悠李が出てきた。 「ごちそうさまでした」 「どういたしまして」  悠李はスマホを出して、連絡先の交換をしようと言ってきた。ずいぶん慣れてるな、なんて思ったけど。 (まあいっか。もう一度会って今度は私が奢って、それで終わり) 「じゃあまたね」 「ああ……また」  車のヘッドライトが悠李を照らして走り去った。見上げた悠李の顔はなぜか泣きそうで、私は少しだけ胸が痛くなった。  
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