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「……月葉!」
「悠李!」
駅の方角から悠李が走ってきていた。人の流れをうまく避けながら私の目の前に現れる。
「お母さんは来た? 大丈夫だった?」
「うん、今ね、ちゃんと別れてきたよ……」
涙を堪えたまま笑顔を見せると、悠李がぎゅっと抱きしめてくれた。
「よく頑張った、月葉……」
「うん……ありがと……」
悠李はタクシーを拾い、そのまま家へと向かった。車内で私は今日のことを全て話して聞かせる。
「そうか……会社の人に感謝しなきゃいけないな」
「ええ。おかげですごく勇気が出たの。その後母に会った時も、強く言うことができた」
「ちゃんと断ることができたのは本当に良かった。搾取できると思っていた相手から反撃されるのは、きっとダメージが大きかったと思うよ」
「ありがとう、悠李。あなたがあの時ハッキリ言ってくれたから私も一歩踏み出せた。本当に感謝してる」
タクシーの中で手を重ね、私は悠李を見つめた。そして小声で囁く。(……愛してる……)
悠李も耳元で呟いた。(俺も、愛してるよ……)
街の灯りが流れていく。私たちは指を絡めお互いの熱を感じながら、早く家に帰ることだけを考えていた。
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