罠 ~陽菜side~

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罠 ~陽菜side~

 月葉の彼氏が二股するように仕向けたのは、ほんの出来心だった。  たまたま二人がデートしているところに出会ってしまい、かなりむかついた私。 (何? 月葉のくせに彼氏がいたの? しかも今まで黙ってたなんて、許せない)  見た目も感じもいい男だったのがまた私をイラつかせた。職場や年収を聞き出して見下してやろうと思ったら、意外にもちゃんとした職場だったし。 (ホーバル販売って聞いたことある会社だ。年収もまあまあありそう。なんで月葉にこんな男が。私がこんなに婚活に苦労してるっていうのに)  私はずっと人より可愛いと言われてきた。どの集団に入っても必ず上位。彼氏が途切れたことだってなかった。  そんな私がなぜか結婚だけはできずにいる。地味で不細工な月葉は一生結婚できないか、または同じように地味で不細工な奴と結婚するだろうと思っていたのに、こんな男と結婚されたら今度は月葉のほうが私を見下してくるだろう。 (なんとかならないかな。例えばあの彼氏が浮気するとか)  顔を見られた私では彼氏を誘惑することはできないけど、会社の若い女子を使えばいけるかもしれない。そう思った私は、過去の元カレたちに連絡を取りホーバル販売に伝手(つて)がないか探してみた。 「俺、知ってる奴いるよ」  だいぶ前に付き合った男から返事があり、連絡先をもらった。 「でもさ、すげークズだよ、そいつ。既婚者なのに合コンしまくっててさ」 「いいのよ別に」  それから私はその『クズ』に連絡を取り、話を取り付けた。23歳の可愛い子と合コン、と言ったらすぐに飛びついてきた。 「その代わり条件があるの。片瀬真吾って人を必ず入れて」 「いいっすよー。そいつ俺の後輩で合コン仲間だから、お安い御用っす」 (なんだ。結局、月葉の彼氏もクズじゃない)  笑いが込み上げてきた。幸せだと信じてる月葉がどん底に落ちるのが楽しみ。私は合コンのメンバーに選んだ美音と真紀のそれぞれに、片瀬真吾を勧めておいた。どちらかがカップル成立すればそれでいい。顔バレしている私は当日ドタキャンする予定だ。  そして……目論見通り美音と真吾が恋仲になった。 (ふふ、めっちゃ簡単な男じゃん。早く月葉にバレるといいのに)  
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