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隣の席の元カレ
真吾と別れてから半月が経った頃、突然LIMEが来た。
(……! ブロックするの忘れてた……)
なんだろう。もしかしてやり直したいとか? まさかね、そんなわけないか。複雑な気持ちになりながらトークを開いた。
『ワンドルのライブには行きたいんだけど、だめかな』
(あ……そうだった)
ワンドルとは私が中学生の頃から大好きなバンド、ワンダードルフィンのこと。何度応募してもライブに当たらなかった私が、今回のツアーで初めて当たったのだ。しかも、ツアーファイナル! それが今度の日曜日だ。
(……真吾と一緒に行くつもりで応募してたんだったわ。ライブに行きたいから電子チケットを分配してくれってことなんだろうけど……)
なんで、子供作って別れ話してきた元カレと隣り合わせで参戦しなくちゃいけないの? 図々しいにもほどがある。初めてのワンドルライブが嫌な思い出になってしまうから絶対に一緒になんて行きたくない。
『あなたの分は公式チケットトレードに出しました』
本当はまだ出していないけど、嘘をつく。これくらい、二股に比べたら可愛いものだろう。
『わかった。ごめん』
ペコリ、というスタンプとともにそう送られてきた。
(こんなこと平気で言ってくるなんて。結局、私は舐められてたってことよね……)
腹が立って、LIMEをブロックしたあとすぐさまチケットを売りに出した。こうなったらグッズも山ほど買い込んで、一人で思い切り楽しんでやるんだから。
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