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そして翌日、待ち合わせのカフェ。ご機嫌な様子で真吾さんは現れた。
「美音、元気そうだな。会いたかったよ」
「真吾さんもお元気そうで」
皮肉にも気づかず、ハンバーグセットを注文する。私はコーヒーだけなのに。
「俺さ、やっぱり美音と結婚するよ。あの時は騙されたと思ってショックで、もう結婚はしたくないと思っていたんだけど……でも美音を好きだという気持ちは結局変わらないし。子供はまたすぐにできるさ。だからもう一度、結婚に向けて話を進めていこう」
上から目線で能天気に一人で喋っている。心の中でため息をついた。
「その前に真吾さん、この写真見て。この人、知ってる……?」
私はスマホの画面を真吾さんに見せた。陽菜先輩の写真を表示させてある。
「ん……? 見たことあるようなないような……いやでもどこかで……」
真吾さんは必死で思い出そうと画面を見つめていたが、そのうちハッと閃いた顔をした。
「あっ! 思い出した、月葉の姉さんだ」
そしてすぐに、なんでこの人の写真を美音が……? と怪訝な顔をする。
「その人ね、私の会社の先輩なの。名前は英陽菜さん」
「ああ、確かそんな名前だった気がする……驚いたな、美音の同僚だったのか」
「そう。そしてね、合コンで私に真吾さんをいい人だと勧めたのも、妊娠してでき婚に持ち込めってアドバイスしたのもその人」
「は……?」
真吾さんは私が何を言いたいのかわかっていないようだ。
「つまりね。真吾さんが月葉さんの彼氏だと知りながら私に合コンの話を持ち込み、浮気をさせるように仕向け、そのうえ妊娠まで唆したのが陽菜先輩ってこと」
「ええ? ええ? 意味がわからないよ……月葉と俺を別れさせようとしたってこと?」
そう、普通ならわからないだろう。でも陽菜先輩ならやる。あの人は他人の幸せを許せない人だ。きっと、自分が結婚できないのに妹に彼氏がいることが我慢ならなかったんだろう。
「どういうつもりかはわからないけれど、そうなんでしょうね。姉妹間の確執に私が駒として使われたことに、私はものすごく怒っているの」
「そ、そりゃそうだよな……」
まだ他人事のような顔をしている真吾さんに、私は精一杯の低い声を出してみる。
「そして、彼女がいながら合コンに来て私と付き合い始めた真吾さんにも怒ってる。あなたが二股なんてしなければ……私は……」
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