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金沢旅行
最近、悠李はまた少し仕事に余裕のある時期に入った。残業も出張も少なくなり、一緒にいられる時間が多くなっている。
「旅行とかは、こういう時期に行くんだよ」
「そうなんだ。今まで、どんなところに行ったの?」
「……俺は、どこにも行ってないけどね。同僚がさ、そう言ってただけ」
ベッドの中で私を後ろから抱きしめたままの悠李が拗ねたように言う。
「ほんとに勉強ばかりの人生だったから何の経験もしてなくて。このまま何も知らずに死ぬのかと、夜一人で怯えたこともあったよ」
「ふふっ、大袈裟ね。じゃあ悠李、これからいっぱい二人で遊ぼ?」
「もちろんだよ。俺、月葉とやりたいことめっちゃある。で、まずは旅行、行こう」
旅行と聞いて私はくるりと体の向きを変え、悠李の顔を覗き込んだ。
「ほんと? いつ?」
「今週末。月葉、予定何もないって言ってただろ? だから俺もう、予約しちゃった」
「えー、どこどこ? どこに行くの」
悠李はちょっと得意そうな顔で言う。
「金沢」
金沢! 以前私が行ってみたいって話したことを覚えててくれたんだ。
「嬉しい! ありがとう、悠李!」
私は悠李の首に腕を絡め頬擦りする。
「俺も嬉しいよ……月葉がまた裸で抱きついてきてくれるから」
さっきエッチしたところなんだけど、悠李はもう元気になっているのがわかる。それが愛しくて、そっと手で撫でてみた。
「……っ……月葉に触れられたら、すぐに出てしまいそうだよ」
「だめよ……もっと気持ちよくしてあげるから、我慢してね……」
私は毛布の中に深く潜り込み、悠李の身体に唇を滑らせていく。
自分だけじゃなくて悠李も喜ばせたい。そんな気持ちが私に芽生える日が来るなんて。
(好きよ、悠李……あなたの全部が愛しい)
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