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ちょうど予約の時間になったのでレンタル着物屋に入り、私はヘアセットもしてもらった。悠李は紺色の着物、私はクラシックな柄だけど明るめの色で。年齢にちょうど合う、いい感じに仕上がった。
「月葉似合うよ……やっぱり着てもらってよかった」
店員さんが呆れるんじゃないかと思うくらい悠李は褒めてくれるので、恥ずかしい。けど、嬉しい。
二人で並んで茶屋街を歩き、金箔を使ったお土産を選んだり町屋カフェでお茶したり。たっぷりと着物デートを楽しんだ。
「宿泊は香林坊のホテル取ってあるから。ホテルで一休みしたら、夜は金沢おでん、食べに行こう」
悠李の考えたデートが私にとって完璧すぎて驚いてしまう。実は私は予定を詰め込み過ぎるとそれだけで気持ちが疲れてしまうところがある。だけど悠李は休憩を挟んで余裕のある日程にしてくれるから、全然疲れないのだ。
着物の返却時間が近づいてきた。レンタル屋さんに向かって歩く途中で私は立ち止まり悠李を見上げた。
「悠李、ありがとう。金沢、すごく気に入ったわ」
「月葉が楽しんでくれたら俺も嬉しい。月葉の可愛い写真もたくさん撮れたし」
悠李も優しい目をして微笑んでくれる。
「悠李といると何をしてても楽しいの。どんどん好きな気持ちが増えていくみたい」
「俺もだよ……ねえ月葉」
「なあに? 悠李」
「こんな言葉を見かけたんだ。『結婚は一生遊べる友人を探すこと』って。俺さ、月葉のことを大切な恋人だと思うしそれは一生変わらない。でもそれと同時に、何をしても楽しい親友のような気持ちにもなっているんだ。ずっと一緒にいても疲れなくて笑っていられる。これって、すごく奇跡のような気がするんだ」
(えっ……け、結婚?)
その単語を聞いてドクンと胸が大きく高鳴ったけど悠李は涼しい顔をして微笑んでいる。私だけ気が早いみたいで恥ずかしい。
(……でもそうね……そんな人に出会えることって確かに奇跡かもしれない……その奇跡を永遠にできたら嬉しい)
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