隣の席の元カレ

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 そしてライブ当日、日曜日。私は一人で幕張にいた。 (ここが幕張メッセ……! ついに来たわ)  今までCDやDVDでしか聞けなかった生歌が聞ける。それだけでテンション爆上がりだ。グッズは通販で先に購入していたけれどやっぱり並んで買い足してみたり、フォトスポットの列に加わってスタッフさんに写真を撮ってもらったり。一人ぼっちではあるけれど存分にライブ前の空間を楽しんでいた。  そして開場時間になり入場が始まった。私の席はA3ブロックの14列目。左端から二番目だ。私の右にはカップルが仲良く座っているから、真吾の席は左端だったんだろう。 (やっぱり、真吾に渡さなくてよかった。こんな至近距離で二時間も一緒にいたくない)  真吾が座るはずだったチケットは売れたのだろうか。開演時間近くになっても誰も来ていないのだ。ギリギリに出したせいで売れなかったのならもったいない話だ。  やがてライトが消え、音が流れ始めた。 (いよいよだわ……!)  そして、ワンドルのメンバーがステージに姿を現した。その瞬間、すべてのことが頭から吹き飛び、私は叫んでいた。 「礼くーん! 則さーん! アイジー! まさー!」  バンドメンバー全員の名を呼ぶ。イントロが流れ始めると私は入場口で配られたLEDバンドを着けた手を上げ歌い出した。  ちょうどその時、私の左側に人がやって来た。よかった。席、無駄にならなかったみたい。  その人はとても背の高い男の人で、振り上げた手のLEDがめちゃくちゃ高いところで光っている。それがなんだか可笑しくて、笑いながら歌った。 (メンバーやお客さんとの一体感……これがライブ!)  そして私は人生初のワンドルライブを存分に堪能したのだった。
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