3322人が本棚に入れています
本棚に追加
「……本日は規制退場となっております。ご着席のまま、指示をお待ちください」
ライブが終わり、会場が明るくなってアナウンスが流れる。汗だくの私は放心状態でパイプ椅子に座っていた。
(よかった……素晴らしかった……礼くんのボーカル、神……!)
右側のカップルは感想を言い合っていて楽しそうだ。私もあんなことがなければ真吾とこの感動を分かち合っていたんだろうけれど、残念ながら一人なので心の中だけにとどめておこう。帰ったらセトリを思い出してメモしておかなくちゃ。
ふと、左側から視線を感じた。開演ギリギリに来た隣の男の人だ。顔を覗き込んでじっと見られている気がする。
(え、やば……振り向かないようにしよ)
すると突然、聞き覚えのある高めの声で突然話し掛けられた。
「なあ、もしかして……月葉じゃねぇ?」
「え?」
パッと顔を上げてその人をじっと見た。
「も、もしかして……悠李?」
背が高く綺麗な顔をしたその人は、中学の同級生で一か月だけ付き合った元カレ、鷺宮悠李だった……。
最初のコメントを投稿しよう!