鬼ノ部三部 其ノ壱 運命を覆すため我は禁忌の扉を開く

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鬼ノ部三部 其ノ壱 運命を覆すため我は禁忌の扉を開く

「この裏切り者が!」 男の野太い怒声が響いた。それから先はあっという間だった。弁解の余地など無く。 序.黎明  今は昔。それは後の世において、神代と呼ばれることになる時代のこと。神も人も、亜人と呼ばれる者たちも、その他ありとあらゆる生き物たちも、全てが分け隔てなく暮らしていた時代。  それは穏やかな時間が流れ、神々も人々も、亜人たちも気性が優しく、住みやすい気候は夢のような世界だった。花は咲き乱れ、常に作物が実っている。誰も飢えることの無いが故、争いという概念が存在しない、楽園と呼べる世界。  豊かであるが故、変化はあって無いようなもので衣服や住居、道具の(たぐい)は粗末な状態が長く続いた。それでも誰も不満に感じることはなかった。皆が同じ状態だったこともあるだろうが、飢えないこと、寒さや暑さに悩まされないことが大きかったのだろう。  時々生まれてくる変わり者が、何かを見つけたり発明したりした時にようやく一歩、文化が進むような緩やかな時代は、本当に長い間続いた。  神々が世界を支配し、護り、祝福した神代。不幸なことなど何もないと、そこに生きる誰もが信じていた世界でそれは起こった。
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