12人が本棚に入れています
本棚に追加
校門を出る頃には、足元はびしょ濡れ。
川瀬は僕の肩を抱き直すと、
「雨であんまり声は聞こえないかもだけど、
話したいなら話して」
と言った。
「川瀬くん」
「何」
「僕の名前、ちゃんとわかる?」
「え」
「誤魔化さないで答えて欲しいんだけど」
「岸野葵」
「‥‥認識はされてたんだ」
「だって付き合ってるんだろ、俺たち」
「デートさえしてないけどね」
「そんなにデートって大事?」
「川瀬くんは僕のことを好きじゃないから
会いたいって思わないんだよね」
「岸野は」
「何」
「デートで何をしたいの」
「何って、どこか行って時間を共有したい。
2人きりで親交を深めたい」
「なるほどね」
最初のコメントを投稿しよう!