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恐る恐る、 トマトジュースの方に手を伸ばす。
ゆっくりとグラスを揺らすと、赤黒くドロリとした液体から、つんとした臭いが立ち込めた。
「………う、」
突如、胸の辺りから不快の波が押し寄せてくる。
胃からの逆流を堪えながら、流しへと駆け込む。
「う、うおえぇ………っ、ごはぁっ…」
……な、何なんだよ、これ…
何がどうなってんだよ……
「うぐぅっ…」
とめどなく押し寄せる吐瀉物。
吐いても吐いても、不快感が治まる気配はない。
流しに酸えた臭いが充満する。
―――ミシッ……
背後の床が軋む音がした。
振り向こうにも、とてつもない恐怖心に苛まれて振り向く事が出来ない。
「大丈夫?」
言葉とは裏腹に、アイの声には笑いが含まれている。
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