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嘔吐で汚れた口はそのままに、ぎこちない動作で振り返る。
と、アイが壁に凭れながらこちらを見ていた。
逆光で細やかな表情までは確認出来ないが、口角が上がっているのが良く分かる。
「お、おまっ、お前………もしかして……」
「もしかして?」
恐怖で停止しかかっている思考回路。
それでも、アイの目的ははっきり分かる。
…………有り得ない。
有り得な過ぎ、だ。
膝がガクついて、いう事をきかない。
「もしかして………何?」
「………あ、あ……」
ついには、腰まで抜けて、その場にへたり込んだ。
「ふふっ、変なカズヤ」
徐に冷蔵庫を開けたアイ。
「当面は、お肉買わなくても良さそうだけど………日持ちするかな?でも冷凍庫もいっぱいで入らないのよね」
アイが「どうしたらいいと思う?」と問いながら俺の方へと振り返る。
と、その時
―――ゴトッ………
冷蔵庫の中から鈍い音を立てて何かが落ち、俺の足元まで転がってきた。
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