今夜のメニューは生姜焼き

7/12
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
嘔吐で汚れた口はそのままに、ぎこちない動作で振り返る。 と、アイが壁に凭れながらこちらを見ていた。 逆光で細やかな表情までは確認出来ないが、口角が上がっているのが良く分かる。 「お、おまっ、お前………もしかして……」 「もしかして?」 恐怖で停止しかかっている思考回路。 それでも、アイの目的ははっきり分かる。 …………有り得ない。 有り得な過ぎ、だ。 膝がガクついて、いう事をきかない。 「もしかして………何?」 「………あ、あ……」 ついには、腰まで抜けて、その場にへたり込んだ。 「ふふっ、変なカズヤ」 徐に冷蔵庫を開けたアイ。 「当面は、お肉買わなくても良さそうだけど………日持ちするかな?でも冷凍庫もいっぱいで入らないのよね」 アイが「どうしたらいいと思う?」と問いながら俺の方へと振り返る。 と、その時 ―――ゴトッ……… 冷蔵庫の中から鈍い音を立てて何かが落ち、俺の足元まで転がってきた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!