いつも訪れるピンチとヒーロー

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 その日の晩。  スターライトとスターダストとの攻防が激しく繰り広げられ、翌朝にはニュースとして取り上げられた。 花内くん、怪我してた。 大丈夫かな。かなり出血してた映像だったけど、今頃病院かな。  ソワソワしながら登校すれば、朱莉ちゃんが昇降口で待ち伏せてくれたらしい。  ぱっちり二重の、赤茶の長い髪を揺らして両手をひろげて私を捕まえた。 「星祈(せい)!ニュース見た?!」  カッ!と目を見開き、彼女の顔を射抜くように見つめ、手を握った。 「見た!!やばい、やばいよね?!!」  私と朱莉ちゃんは息を溜めて一気に吐き出した。 「シリウス様       カッコ良すぎてやばーいっ!!」」 「アトラス様 「え?」 「へ?」  互いに違和感を感じて首を傾げる。 「し、シリウス(花内 悠真)様だよね?」 「違う違う!アトラス彗星(スターダスト)様だよ?! シリウスのこと滅多打ちにしたあと、『下賎な星の元に生まれ落ちた者たちに数少ない奇蹟を授けよう』って言って必殺技出したあのビジュ!!! 鼻血出し過ぎて貧血になるかと思ったわ!!!」  あ、あれ?朱莉ちゃんってスターライト推しじゃなかったの?  困惑していると彼女はそのまま敵対しているアトラス彗星のことについて熱く語り始めた。 「シリウスのあの屈伏した顔も堪らなかったけどねー!!」 「朱莉ちゃんは加虐性に愛を感じるタイプ?」  ヒヤヒヤしながら聞いていたが、朱莉ちゃんはニタリと口角を引いた。 「あー、そうかも?でも痛いのばかりは嫌だけど。 でも、痛めつけてしまいたくなるほど好き♡って気持ち、なんか分かっちゃうんだよねぇ〜」 「ま、待って?なんか違う方向に走ってない?!」  朱莉ちゃんはテヘペロと舌を出すと、「最近腐界堕ちしましたっ♡つい、出来心でシリウス×アトラスの薄い本を手に取っちゃって!!」と自供し始め、白目を剥いたことは言うまでもなかったでしょう。  あの現実主義の朱莉ちゃんがまさかの腐堕ち・・・。  教室に2人で向かいながら、花内くんの心配をして教室の扉を開いた。 「いや〜っ!!悠真くん大丈夫だった?!」 「昨晩は凄かったね!痛かったんじゃない?」  教室の扉を開けるや否や、女子の心配の色を乗せた声がひしめき合っていた。 その男女の中央にいたのは、激闘を繰り広げて大怪我を負ったとニュースで報道されていた張本人だ。  さらさらな金髪は相変わらず煌めいて、青い瞳は怪我したことなど忘れたと言わんばかりの輝きを放ち、白い肌に無数の青あざを作っていたが、ニュースで見たような大怪我は見受けられない。 「“癒しのキス”でなんとかなったから大丈夫! でも、次こそはシリウスに打ち勝つから、みんな応援してね!」  流石、星の使者と呼ばれるスターライトのリーダー。一際眩しい“シリウス”という名に相応しく眩しい笑顔をみんなに振り撒いていた。  キラキラと、空を1番に輝いて道を照らすような存在。  ホッとしかけたのも束の間、花内くんの机の前へ歩み寄っていた。 「瀬戸内さんおは」 「もう一度」  彼の声に被せるように言葉を発していた。 流石に花内くんも驚いて、目を丸くして困惑している。  心臓が妙に速く脈打つのは、既視感だろうか。 「、“癒しのキス”を施せないかな?」  私は知ってる。 例え、癒しのキスがどんな医療や薬でも治せないものすらも治してしまえる不思議な力だとしても、死を目前にするような傷は、そう簡単に治るものではない。  “命の危機を脱する”というだけで、痛みが減るわけじゃないのだ。  確かに癒しのキスで痛みは半減するが、それでも半年は痛みに耐えた。 たった一度のキスでここまで回復できたけれど、彼はきっと、無理をしてこの場にいるに違いないから。  真剣な眼差しを彼に送ると、彼は少し照れ臭そうに微笑む。 「僕からをってことかな?」 ・・・・・。 「え?」  花内くんの照れ臭そうにはにかむ姿と、周りの燃えるような嫉妬に揺らぐ乙女たちの顔を見て、ヒュッと心臓が縮む。 「ち、違うちがうの!!」  ブンブンっと首が千切れそうな勢いで横に振ると同時に「瀬戸内さーん?」と、低い声で唸る女子たちの声で顔面蒼白させた。
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