いつも訪れるピンチとヒーロー

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キュィイィイィィンッッ!!     キュィイィイィィンッッ!! キュィイィイィィンッッ!!     キュィイィイィィンッッ!! キュィイィイィィンッッ!!     キュィイィイィィンッッ!!  突如としてサイレンのようなコール音が鳴り響き、ただならぬ緊張感に包まれた。  今、2箇所から音が聞こえてきたような? コンクリートで音が反響してたから、2箇所に聞こえただけかな。  シュパッ!!とベンチから飛び起きた花内くんは、両手をパチンと叩いた。  刹那、彼の手のひらから飛び出してきた青い光は、3Dホログラムによって立体的な映像を映し出された。 「わぁ、SF映画観てるみたい・・・」  昼間でもハッキリ見えるホログラムに感動だ。  だが、私の言葉など彼の耳には届いていないらしい。 「シリウス出動します!目的地到着まで3分で完了!」  これが招集合図への返答なんだ。  ホログラムに映し出されたのは目的地までの最短ルートとどんな魔物が出て、攻略方法や魔物の特徴を一眼で確認出来るような情報だった。  ただ、所々見たこともない文字で生成されていて読めない。  きっと一般市民には公開出来ない機密事項なのだろう。  魔物の写真や魔物の追跡を表示したまま彼は地面を蹴って学校のフェンスを難なく飛び越えた。  4mは確実にあるだろうフェンスを生身で?!! 「あ、え?!! 花内くんっ!!無理しないで頑張ってくださーーいっっ!!!」  地面に着地した彼の背中に叫べば、花内くんは私の存在を今知ったみたいな顔して振り返ると、普段見ないような鋭い瞳で微笑んで、街へと姿を消した。 「花内くん、凄いね・・・・?あれ、朱莉ちゃん??」  さっきまで隣に立っていたはずの朱莉ちゃんが隣に居らず、代わりにさっきまで朱莉ちゃんが持っていたホースが落ちていた。 「えぇ?朱莉ちゃんどこ行っちゃったの??」  ““ブブブ””  プリーツスカートのポケットからバイブ音がして、朱莉ちゃんからメッセージ通知が入った。 【せい〜_:(´ཀ`」 ∠): お腹壊したっぽい〜。トイレに引き籠りたいから先に帰るね!何も言わず突然帰ってごめん!また明日話そ♡ by愛するアカリちゃんより】 「えぇ、大丈夫なのー?ほんと、朱莉ちゃんお腹弱いから心配だわ」  決まってお腹が痛い時は絵文字ではなく、顔文字になるのが不思議な彼女だが、彼女の腹痛は今に始まったことではない。  入学してからずっと、休みも多くて激しい腹痛のあとだいたい早退する。 「盲腸とか疑って見た方がいいんじゃないかな」  流石に可哀想すぎるし、見ていて不憫だ。 「あとで一緒に病院行こうって誘ってみよーっと」  頑なに病院嫌い!行かない!を貫く彼女への対応策を練るべく、気合いを入れて水やりを行った。  そして、どんなに疲れていても、痛みがあっても世界を守るべく出動して行った彼の後ろ姿は、かっこよかったよって、それを見て感動したんだって伝えたい。  ふと、先日起きた土砂崩れの時に現れたアトラスを思い出した。  漆黒の軍服を纏った最高司令官、悪の枢軸とも呼ばれる彼の正体は未だ不明のまま。  銀河系を統べる支配者と声を挙げているそうだが、宇宙に詳しくない私はただ、スターライトの敵対者として見るしかなかった。  ただあの時、動転していて状況を把握出来なかったけれど、あり得ないかもしれないけれど。  アトラスは、友近さんと私を助けてくれたように思えてしまうのは、ただの勘違いだよね? * * * 【魔物発生C地点。目的地まで残り300m】  オフィス街のある都心部へ向かっていく魔物殺伐の為、スターライト ブルー担当のスピカ()は隣を疾走する花内を睨みつけた。  彼女の視線が左半身を刺して抉るようで、大変不快な気持ちにさせた。 「そんなに睨んでも怖くないし、痛くも痒くもないけど不快だね。機嫌でも悪いかな?おっと、もしかして女の子の?」  出来るだけサラリと、そしてさっぱり目に伝えたが彼女の眉間に深い皺がまた一つ、そして青スジが入ったのは言うまでもないか。 「ドップラー法で人の気持ちも測れるといいのにね」 「本当下衆(ゲス)。 星祈の男を見る目の無さに頭が痛い。あー、このリーダーが早く⚪︎ねばいいのに」 「サラッと怖いこと言うね、?」  ヘーゼルカラーの瞳が花内へ再び注がれると、花内は肩を竦めた。 「アンタがどんな気持ちで知らないけどね、絶対にアンタを許さないからっ!!!」  彼女が向ける憎悪は本物だ。 これだから、は辞められない。 「仲良くなれるようこれからも努力してみせるよ、」  意味深に微笑めば、スピカは唇を噛み締めて前を向いた。  この先に待つ【彼ら】の元へ。
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