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⭐︎Star✳︎light⭐︎
星の使者と呼ばれる地球を守護する者たち。
そして、地球に降り立った銀河系秘密結社
悪の組織 “Starr✴︎dust”。
銀河を統べる悪の枢軸、アトラス彗星は名前の如く突如現れ、銀河系の星を支配した。
地球外生命体の存在を知らなかった私たち地球人は、スターダストの存在は畏怖すべき対象だった。
残虐で冷酷非道なアトラス彗星は、人間を虫ケラのように扱い、次々と人間を虐殺した。
順調に地球征服を進めていたが、2年前に星の加護を得た使者が彼らの目の前に現れた。
地球で生まれた人間に課された星の力は、悪の組織に対抗すべき根源が備わっているとされ、征服を防いでいる。
19時開始のTV番組のオープニングを観ながら夕飯にしていたところ、まだ幼さを宿した花内くんの姿が放映された。
『うわぁっ!』
『レッド!大丈夫?!くそ、よくもシリウスレッドを!!』
イエローやグリーンに助けられ、花内くんは解けてしまった変身をやり直していた。
そういえば、花内くんっていつからあんな頼もしくなったんだろう。
最近の花内くんの活躍が煌びやかで忘れてしまっていたが、スターダスト地球へ侵略に現れた直後の花内くんは、リーダーらしくなかった。
初めて地球で星の力の加護を受けた1人として、メディアに取り上げれ、毎日彼の姿を見ない日はなかったほど。
中学2年生に進級したばかりで、私の隣のクラスだった花内くんは、いつも暗い顔で華やかさのカケラすらなかった。
それなのに、今やレッドとしてチームの皆んなを率いていくに相応しいリーダーシップを発揮して統率している。
『レッド!そんな不安そうに闘ってたらみんな不安になるよ!みんな、君に命を預けてるんだから!!』
映像に映るレッドは、ただ悔しそうに唇を噛み締めて、けど闘志だけは瞳の中に宿して敵と立ち向かっていた。
レッドはいつも自信無さげで、不安そうで、右も左も分からないまま敵と対峙するはめになっていた。
14歳の男の子は時には反抗的な態度を取ったり、イライラする素振りもあってとてもリーダーらしく見えなかった。
思春期なのだから仕方ないという見方を今なら出来るけれど、その当時は地球滅亡の危機が具体的に挙がっていた年。
たった14歳の男の子が背負うには重圧過ぎた。
世間からバッシングされ、時には上級生たちから特訓と称してタコ殴りにされていた時期もあったと言う。
私はその場面に出会したことがある。
先生を呼びに行った時には、上級生はいなくなっていて、花内くんは酷い怪我を負っていた。
その時はまだ、癒しのキスの存在など本人も知らなかった時だ。
毎日、生傷が絶えず、魔物と闘うたびに救急搬送されていた。
自衛隊と共に訓練をこなすよう指示され、鍛えあげられた肉体は鋼のように厚く、瞬発力も飛躍的にあがったけれど、それでも花内くんは上級生たちにやり返したことはなかった。
『なんでやり返さないんだ、花内!それでも地球の防衛使者なのか?!気合いが足りないんじゃないか?!』
私が助けを呼んだ先生は、ボロボロになった花内くんを更に罵倒して心に攻撃をした。
なんで頑張っている彼がこんなにも酷い仕打ちを受けなければならないのだろう。
美形だとか、王子様だとか言われている今とは比べ物にならないくらい、彼は弱かったし、ヒーローっぽくなかったかもしれない。
『花内くん・・・ごめんなさい。ただ、助けたかっただけなの・・・。傷付けたかったわけじゃないの。ごめんなさい、ごめんなさいっ』
彼の気持ちを忘れて、私はただわんわんと子供のように泣いたっけ。
今思うと、あの時泣きたかったのは、花内くんだったはずだ。
だけど、あの時の彼は、私にとって永遠のヒーローになった気がする。
花内くんは私の手を握って、静かに微笑んだ。
『瀬戸内を傷付ける俺は、やっぱりダメダメな“レッド”だ。
だけど、俺のことで傷付く必要なんてないんだよ。俺は、みんなを守るために存在からさ。
リーダーらしく頑張るから見てて』
彼は私が泣いているから、泣かせまいとしてくれたのかもしれない。
隣のクラスだけど、ずっと見てたから分かるよ。
負けず嫌いな君だから、私が泣いたことで余計に頑張らなきゃって歯を食いしばったんだって。
もう“頑張らなくていいよ”って言えたら、どんなに君を楽にさせてあげられただろう。
でも、きっとその言葉すら君にとっては屈辱になるのだろうね。
闘志だけは揺らがずに、力強く微笑んだ君がいたから『頑張れ』って言った気がするんだ。
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