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金髪、碧眼、高身長、美男子、成績優秀と言えば“花内 悠真”。
性格も優しく、だけど清く正しく正々堂々とした潔く、絵に描いたような人気者の彼は、「レッドだから」と鼻にかけるわけでもなく、あくまでも“みんなと同じ男子高校生”として振る舞っていた。
より彼の人気を博したのは言うまでも無い。
選択授業の美術で、花内悠真をモデルに絵を描いていたが、合法的に彼を見つめ続けられる今日の授業は最高だった。
「ゆぅまぁ!変身ポーズして!」
彼と仲良しの佐々木 洸が意地悪く言うと、花内くんはノリノリで「待て!悪の組織、スターダスト アトラス!
今日という今日は赦さない!!2トトリオンの星の光、スターライトな心で悪を滅ぼす!スターライト レッド シリウス!!」と決め台詞を叫んでポーズを決めてくれた彼に、クラスメイトたちは悲鳴に似た歓声をあげた。
「か、かっこぃぃ」
彼のキラキラした青い瞳に見つめられたら、恋に落ちるに決まってる。
はわぁぁっ♡とため息を溢していた隣で、スケッチブックを力無く持っていた男子生徒が「くだらな」と呟いていた。
漆黒の髪。光さえも吸収してしまいそうな黒い瞳の奥に紫光を宿していた。
闇を抱えていそうな、陰の薄い彼の声を聞いた人なんていただろうか?
「月島くん、機嫌悪い・・・?」
どうしたの?と聞き捨てられずに彼の言葉を拾ってしまった。
彼も言葉を拾われるとは思ってなどいなかったのか、面倒くさそうに一瞥して、再び深いため息をこぼしていた。
「別に」
「ごめんね、騒がしかった?」
選択授業で隣になることがたまにあるが、声をかけたことなどない。
花内くんとは中学の頃から一緒だけど、挨拶程度で。こと更に声をかけたことのない月島 彗星とは、挨拶すらしたことがないけど。
月島さんは一瞥すらすることなく、スケッチブックを真っ白のままにして言った。
「花内 悠真ってそんなに凄いの?」
台の上でポーズを取らされている花内くんを睨みつけた月島くんの表情は、背筋すら凍てつくほどに冷たい眼差しだった。
まるで、彼に恨みでもあるかのような憎悪の瞳。
思わず肩が含みそうになったが、表情を作る。
「す、凄いよ?私、2年前に花内くんに助けられて、勇敢だなって。かっこよかったし、凄いって・・・あはは、花内くんの魅力を伝えたいと思っても、言葉にすると難しいね」
自分の語彙力に失望して肩を落とした。
私にもっとプレゼン力なあれば!!
隣に座っている月島くんは私の言葉にピンときている感じはなく、感情ここに在らずといった感じで「ふーん」と興味なく俯いていた。
月島くんって、謎だなぁ。
誰かとつるんでいる様子もないし、だからと言っていじめられていたり、目立つこともない。
細縁の眼鏡をかけた真面目そうな彼は、どこかやる気が削がれているような印象を受ける。
まるで、なにをやっても無駄。というような、正気の無さである。
まぁ、学生なんてそんなもんかもしれない。
私もそのうちの1人であるし。
などとと納得していたが、度々選択授業で同じになると、花内くんをスケッチする時だけいつもスケッチブックは真っ白だった。
月島くんって、何考えてるのかよくわかんない人だ。
私が彼に抱いた印象はそんなだった。
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