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 雪道の下に眠るアスファルトが凍結していないか足先で確認しながら歩く。時折、買い物袋に降り積もった雪が袋の中に入らない様に持ち方を替える。  腕時計を確認するが、時刻が読み取れない。まつ毛に雪が降り積もっているからか、文字盤が凍結しかけているせいなのか良く分からない。おそらくは、その両方なのだろう。  露出した手首に氷点下の風が吹き付けガラスの破片で撫でられたような鋭利な痛みが走る。反射的にコートの袖を戻す。時間を確認するために、皮手袋を外して携帯電話を取り出すのも億劫なので諦めて再び歩き始めた。それに結局のところ、時間が確認出来たところで事態は変わらない。雪が止む訳でも時間が遡る訳でも無く、得られるのは安堵か落胆のどちらかでしかない。それに例え、予定より些か遅れていようが、歩き方を牛歩から変更することも(はばか)られた。
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