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第4話 増える恋敵?
「次は何して遊ぶ?」
大きな木の陰に、子供が二人座り込んでいる。肩までの銀髪を揺らす女の子と、黒い短髪の男の子。幼い姿のリダールと私だ。初めて彼と出会った頃の姿。
ああ、これは夢だわ。
小さな私は、しゅんと落ち込んだように俯いた。
「私、もう帰らなきゃ……」
覚えてる。これはきっとあの日の記憶ね。大切な思い出のワンシーン。
お城に帰りたくなくて、秘密の友達であるリダールとずっと一緒にいたくて、ぐずっていたのよね。
そんな幼い私に、やっぱり幼いリダールが手を差し伸べた。
「じゃあさ、セレア!」
「リダール?」
「今は無理だけど……。セレアに酷いことさせるお父さんとか、国の人たちから逃げてさ。俺と結婚しようよ! そうしたらずっと一緒にいられるだろ?」
胸がふわふわとして、くすぐったくて温かくなった。
本当に嬉しかったのよ。ほっぺを真っ赤にしたリダールが、恥ずかしそうに、でも真剣な目でそう言ってくれたの。
「リダールと、結婚……」
「ああ! ……セレアは、嫌?」
「……ううん。嫌じゃないわ」
でも、嬉しいのと同じくらい、悲しくなったわ。夢の中の小さな私は、あの頃の私は、未来の幸せなんて信じられなかったから。
「でも、私は悪い聖女で、リダールは魔族でしょ? きっと、誰もお祝いしてくれないわ」
「だったら……。俺が強くなって、ぜんぶ変えるよ」
男の子が女の子の手を握って、つたない誓いを立てる。一途で純粋な、可愛らしいのに美しくもある、不思議な光景。
「セレアが聖女だとか、俺が魔族だとか、関係なくなるくらい。ぜんぶぜんぶ変えて……。俺とセレアが幸せになれる結婚をしよう」
だからほら、笑ってよ。
リダールがパッと眩しい笑顔を見せて、泣いていた私もつられて笑顔になった。
「ええ……。待ってるわ」
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