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「そんなことが気になるって、期待していいわけ?」
ニヤッと笑った意地悪な笑顔に胸が高鳴る。
形勢逆転。
泣き止んだ私を保健室の壁際まで追い込み両手で閉じ込める。
あれよあれよと言う間に黒瀬のペースに巻き込まれる。
近くにある黒瀬の顔、長い睫毛、綺麗な肌、茶色い瞳、全てが私には刺激が強すぎる。
「お前は『俺とどうにかなるなんてありえない』って思ってるんだろ?」
「っ、」
…またお前って言った。
「俺から何も聞いてないのに、そうやって噂信じちゃうんだ〜俺のこと避けてたもんね。」
『悲しいなぁ』なんて続ける。吐息がかかる。
「…それはっ、黒瀬が、」
「俺がなに?」
「…私のことは名前で呼ばないくせに、『さとみ』って下の名前で呼ぶからっ」
「っ、誤解してるみたいだけど『里見』って苗字だぞ。」
「…そ、そうなの?」
さとみっててっきり、下の名前だと思ってた。
「それはヤキモチ?」
それはそれは嬉しそうに、私に詰め寄る黒瀬。
そんな近くで見つめられるとどうしていいかわからない。
「そ、それに!黒瀬だって私のこと避けたもん。」
本当に辛かったんだからね。
「…それはお前が渡にあんなこと言うから傷付いたんだよ。そんな風に思われてるなら、お前の側にいないほうがいいと思った。」
悲しそうな黒瀬の表情に、きゅんと胸が鳴る。
そして顎を持ち上げられて目線を無理矢理合わせる黒瀬。
だめだ、心臓がもたないよ。
「なんでそんな顔するかな。…可愛すぎてもう無理、」
そんな言葉いきなりもらっても、処理するのに時間がかかる。
その瞬間、妖艶な瞳が近づき、ふわっと黒瀬の香りがした。
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