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ごんがらがって嫌になる
「俺、夕日のことが好きだ。」
教室をオレンジに染める西日。
蝉の鳴き声、野球部の掛け声、夏の匂い、
真っ直ぐな彼の一言で全部感じなくなった。
持っていた飲みかけのペットボトルのサイダーを落としそうになる。
いつもふざけてる彼の、やけに真剣な顔に嘘ではないことはすぐに分かった。
…このタイミングで告白されるなんて思ってなかった。
どっ、どうしよう。
沈黙になること10秒ほど。
「…へっ、…ど、え、…またー!朝丘のくせに変な冗談言わないでよね!び、びっくりしたぁっ」
びっくりして震える手。
パニックのあまりやっと出た言葉は、彼をひどく傷つけるものだった。
「……っ…」
そう気づいたのは、綺麗な顔を酷く歪ませて俯く彼を見てから。
どくんと心臓が嫌な音を立てる。
「…あ、朝丘?」
顔を上げて、ゆらゆらと切なく揺れる瞳がもう一度私を見る。
「…振るにしても、もうちょっと振り方あるだろ。」
ああ、なんてことしちゃったんだろう。
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