降り頻る雪は愛の証

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 手を繋ごう、という意思表示だったのに。先輩は私の右手をそっと下から持ち上げる。 「違いますよ」 「違くないよ、聞いて欲しいことがあるんだ」  先輩がすぅうううとまた深く息を吸って、吐く。言いづらいことを、ついに言われるんだ。どんなことでも受け止める。最高に気分がいい、今なら先輩が遠くにいっちゃうとかでも、寂しいけど、受け止められる気がする。 「聞きますよ、なんですか」  また深く深く呼吸だけを繰り返して、先輩は言わない。止んでいたはずの、雪がまた降り始めた。チラチラとイルミネーションの光を反射しながら、雪が落ちていく。  かなりの時間待っていた気がする。先輩がポケットを漁り出して、何かを取り出したかと思えば、持ち上げていた私の右手を強く引き寄せた。  よろけて、先輩にぶつかるような形になって、あまりにも不格好だ。このまま抱きしめてみようか、と思えば私の手に何かしてる。するんっと指に何かが通った感触がして、持ち上げようとすれば抱きしめられた。 「美晴が好きです」 「へっ?」 「好きです、たぶん、これが、美晴の言ってた、恋愛的に好きってことだと思います、だから、キスしていい?」  先輩の声が耳元で聞こえて、くすぐったくなる。内容よりも、先輩の声で震える耳が熱くて、どうにかなってしまいそうになる。 「それが、言いたくて、あんなに言いづらそうにしてたんですか?」 「だって、美晴が、恋愛的に好きだって思ったらちゅーしてくださいね、とかいうから、ロマンチックにって、思ったのに……もう、そういう空気でもなくなったな」  先輩を左手で強く抱きしめ返して、空に右手をかざす。薬指に、シンプルな指輪がはまっている。真ん中には小さい白い石。まるで、雪を固めたみたいなとろんっとした色合いだ。 「付き合うってことで、いいんですか?」 「恋人、みたいな感じではあったけど、付き合うとかも言ってなかったし。こんな俺でもよければ、その、恋人にしてもらえますか」 「恋人なのかなぁって勝手に思ってましたけど、私は変わらずに先輩が好きですよ」
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