【カウントダウン】

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【カウントダウン】

・ ・【カウントダウン】 ・  滝行も終わり、また俺の部屋に戻って来た悠馬と俺。  こたつの中に二人で入ってから、俺はミカンに手をかけたその時だった。 「100! 99! 98!」  急にカウントダウンをし始めた悠馬。  いや、 「今日は一月二日だぞ、カウントダウンも妙に長いし」  それでもカウントダウンを止めない悠馬に、俺は少しイライラしながら、 「おい、長いカウントダウンをただただ聞いてる時間、俺はあんま好きじゃないぞ」  悠馬は一向に止めず、ただ叫び続けている。  でもその声がどこかヤケというか、ちょっと語気が強い。 「何かあったのかよ、悠馬」  すると悠馬がスマホを見ながらカウントダウンをしていることに気付き、 「しっかり秒を見ながらすな、律儀の一面を出すな、そんなロングカウントダウンで」  と言っても悠馬は止まらない。  何なんだと思いながら、悠馬のスマホを覗き込むと、なんとそこは時計アプリじゃなくてラインで、彼女とのライン・グループらしい。  まあいいかと思いながら、文字を読んでみると、悠馬の彼女からのメッセージで止まっていて、 『年末年始に友達優先するなんてホント空気読めないね、百秒以内に返信してくれなかったら別れましょう』  と書いてあった。  いや、 「返信しろよ、悠馬」  俺のほうを向いて、首も頷いているが、全然メッセージを打ち込もうとしない悠馬。 「いやスリルを楽しむなよ、百秒ギリギリでやってやろうじゃないんだよ」 「20! 19!」 「ほらもうギリギリになってきたから、悠馬の数える感覚が間違っていたらもうアウトかもしんないぞ」 「10! 9!」  もう間に合わないのでは、と思っていると、悠馬が嬉しそうに叫んだ。 「1! 0! やったぁ! あんなヤツとはもうおさらばだぁ!」 「別れたかったのかよ」 「何で向こうから付き合ってくれって言ったのに、こっちが追いかける素振り見せないといけないんだよ」 「急に哲学すな」  悠馬はスマホをこたつの上に置いて、背と腕を伸ばしながら、 「せぇせぇするね! おれはやっぱり陽介と一緒に遊んでいるほうがいいわ!」 「悠馬がそれでいいのなら、別にいいけども」  と答えておいたけども、内心少し嬉しかったりする。  だって悠馬の彼女は全然悠馬のことを分かっていないから。  俺はもっと悠馬のことを理解してくれる、悠馬が行なう、自分の分以外のケーキのセロハンを舐めることも許容する彼女と付き合えばいいと思っている。
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