【うさぎ年】

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【うさぎ年】

・ ・【うさぎ年】 ・ 「ところで干支という文化知ってる?」  悠馬がミカンを食べている俺に対して、そう言ってきた。  いや、 「その話は前もしただろ」 「でもさ、去年うさぎで今年龍ってさ」 「辰な、一応だけども辰な」  そんな俺に制止するような手のポーズをしながら、 「まあまあまあ」  と言った悠馬。  別に(何でも)いいけどな、と思っていると、悠馬が、 「うさぎ、龍に食べられる寸前だったんじゃない?」 「そんなことないだろ、干支のレースで選手を食べるみたいな非道徳的なことしないだろ」 「いやでも龍が短気だったらありえるだろ?」 「そもそも龍ってうさぎを食べるのか?」  と疑問で返すと、その場に黙り込んだ悠馬。  いや、 「そんな悩ませるつもりは無かったんだけども」 「龍って何食べるんだろ?」 「何も食べない可能性もあるぞ。だって空想上の生き物だからな」 「逆にうさぎって何食べる?」 「逆だな。うさぎはどんぐりとか木の実じゃないか?」  すると悠馬が一息ついてから、 「どんぐりで腹いっぱいになるかな?」 「いやうさぎ自体も小さいから。小さい生物って食べる量が少なくてもいいように小さく進化してるんだってさ」 「じゃあ龍はめちゃくちゃ食うじゃん」 「龍がデカいと決まったわけじゃないけどな」  また黙り、腕を組み、俯いた悠馬。  いや、 「ラーメン屋の新メニュー作りの悩み事みたいなポーズされても。まあ龍はとにかく空想上の生き物だから何でもアリだよな、解釈は」 「逆にうさぎのマックス体重ってどのくらい?」 「逆だな。それはスマホで調べれば出てくるんじゃないか?」 「電子辞書だとダメなのか? 陽介のうちにはあるだろ」 「電子辞書はそういう更新していくものには弱いから」 「逆にうさぎは更新していくものに強いのか?」 「逆過ぎるだろ。まあ徐々に進化していくから、更新していくものに弱くは無いんじゃないか」  すると悠馬は生唾をゴクンと飲み込んでから、 「うさぎって、強いな」 「いやそんな溜めて言うことじゃないんだよ」 「逆にラーメン屋の新メニュー作りの悩み事ってたいしたことないよ」 「そんなことは無いだろ、人生かかってるから結構なことだよ」  と返しておいた。  いや俺のラーメン屋例えをあとから粒立てるなよ。
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