【悠馬の覇気】

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【悠馬の覇気】

・ ・【悠馬の覇気】 ・  すると悠馬は満面の笑みになって、 「そうだよな! 贔屓って良くないよなぁ!」  とバンザイした。  今の状態の悠馬にはもう覇気は無い。今すぐ破棄してしまってもいいが、まあそう言ったんだし、ちょっとはやってやるか。 「じゃあさ、あの”すいへーりーべーぼくのふね”の続きを作りたいってことだろ?」 「そうそう、そもそもリーベーって何だよ、って話だよな。アルゼンチンの強豪サッカーチームのサポーターの愛称かよ」 「まあそれはリーベルだけどさ、どうやって続きを作っていくんだ」 「パッションで」 「サイエンスをパッションでやり切るって、もはやサイエンスのプロかよ」 「まあそんな感じかな、一石を投じたい。ゴツゴツした岩みたいなチョコ、ブラックサンダーばりに」 「何が言いたいんだよ、ブラックサンダー食べたいだけかよ」 「ブラックサンダーは食べたい」  そうオウム返ししながら頷いた悠馬。  そこのオウム返し、マジで要らないだろ。  まあいいや。 「じゃあ周期表見せてやるから、作っていけばいいわ」  俺は電子辞書で周期表を検索して、俺がゆっくり見せながらやっていくことにした。 「ほら、次はNa、Mg、Alとかだな」 「生が良い、だな」 「そんなビールジジイみたいなこと言うなよ、急に。あとAlはLだから、I(アイ)じゃないから、アルミニウムだから」 「生が良いアル、にするか。中華系の可愛いキャラクターだと思えば、生が良いもビンタしたくならないだろ」 「さすがに元々ビールジジイへビンタしたいとは思っていなかったけども、まあいいか。いちいち突っかかってたら終わんないもんな」  悠馬は満足そうに頷いている。  今のところは良い感じらしい。 「次はSi、P、S、Cl、Arまでかな」 「えっと前のヤツと合わせて、生が良いアル詩、PS汁アルだな」 「何だよ、生が良いアル詩って、生が良いと中華系のキャラクターが言っているポエムということか?」 「そうそう、この世には何億モノポエムがあるんだから、そういうポエムもあっただろ」 「ちょうどそれだけ無いような気もするけどな。ポエムって恋愛のイメージあるし、ビールは生が良いということを伝えたいポエムってちょうど無いだろ」 「いやあるんだって絶対」 「で、PS汁アルってなんだよ」  すると悠馬はよくぞ聞いてくれたといった感じに、博士口調でこう言った。 「それはつまり、要は、PSというのは手紙の追伸だよな、追伸で汁アルと伝えているんだ」 「汁ってなんだよ」 「麦汁、つまりビールということだ。ほら、生が良いって何の生か分かんないじゃん。ここで汁と伝えることにより、ビールで確定になるんだよ」 「別にビールで確定したいわけじゃないけどな」 「でもほら、僕の船の上ではビール飲みたいもんなんじゃないの? 知らんけど」 「まあ、ジジイはそう言いそうだよな」  と俺が言ったところで矢継ぎ早に悠馬が、 「ジジイだけじゃない! 中華系のキャラクターもいる!」 「あっ、僕の船と言っているジジイとは別に中華系のキャラクターもいるってことなんだ」 「当たり前だろ!」 「じゃあ単純に説明不足だろ」 「でも僕の船って言ったヤツにはアル付いてないじゃん、で、今回新しくアルが付いた中華キャラクターが登場したっていう」 「まあ僕の船までは元々のヤツだからな」  とちょっとあしらうように言ったんだけども、悠馬は一切気にする様子は無く、 「おれはとにかくな! チャイナドレスが大好きなんだよ! いつかチャイナドレスの店へ行きたい!」 「それはもう勝手に調べていけばいいとして、K、Ca、Sc、Tiあたりまでかな」 「経過、スク・タイムだな」 「何だよ、全部説明してくれ」  悠馬に対しては何がだよマジで、と悪態つきたくなるほどそう思うけども、悠馬自身はやたら満足そうに頷きながら、 「時間経過して、チャイナドレスの女子がスク水タイムに突入したんだよ」 「何それ、変態ジジイになってない?」 「船を所有している僕がチャイナドレスの女子を雇っていたんだけども、時間が経過してスク水タイムに突入したんだよ」 「何かその僕という人間、嫌いだなぁ」 「おれはちょっと憧れてきた」 「じゃあオマエが変態ジジイなんだよ」 「あえて否定はしない」 「否定してくれ」  まあもうこれは完全に悠馬の妄想世界で、自分が夢見ている世界なんだろうなぁ。 「じゃあ次はV、Cr、Mn、Feあたりかな」 「まあまずヴォォォオオオオオオオオオオオオオオ! だな!」 「いや奇声で一個使うな」 「スク水タイムに突入して興奮しているんだよ」 「チャイナドレス好きはどうしたんだよ」 「黒マンガ」 「急にどうしたんだよ、Cr(クロム)とMn(マンガン)ということか?」 「そうそう、もう何か展開が黒マンガぐらいの、R-18指定の黒マンガ並でふぇぇぇぇえええええええええ! だよ」 「悠馬、そんな安易に奇声をアリにするな」  でもまああんま強く言って話が進まなくなるのも嫌なので、このくらいにしておこう。  早くこのくだり終えて、テストの話がしたいし。
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