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【終盤戦】
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・【終盤戦】
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まあ、この物語どうなっていくか少しだけ気になっているけどもな。
俺は電子辞書をちょうどいい具合に見せながら、
「次はRb、Sr、Y、Zr、Nb、Moまでかな」
と、でもまあ早く終わらせたいは終わらせたいなと思いながら、長めに言うと、
「ラブすらWHY? 全部もう!」
「いやYをWHYにするなよ、分かりづらいだろ、元素記号がW・H・Yだと思うだろ」
「大丈夫だよ、三文字の元素記号無いからなんとなく分かるはず」
「じゃあいいか、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Inかな」
「テル路地パだ、えー、シーン」
全然意味が分からない、ちゃんと聞くか。
「テルってTelってこと? 電話?」
「いや僕の船って言ってる、僕というキャラクターの名前」
「個人名出すのは反則だろ、何でもアリになるじゃん」
「それくらいはいいじゃん、ありえる名前だから」
「じゃあ路地パだって何だよ」
「路地を歩くパーティだ、ってことだよ。テルの船にいる他のジジイ連中は船でパーティするレベルの連中じゃない、路地を歩くパーティレベルだってこと」
「何それ、ポケモンで言うとこのガチパじゃないってこと? ガチのパーティじゃないということ?」
「そうそう、テルが呼んだパーティはガチパじゃなくて、路地パだってこと。そう女子から言われて『えー』とテルが反応したら場がシーンと静まり返ったんだよ」
「テル、周りのパーティからも慕われてないじゃん」
「そう、四面楚歌、まさにおれの興奮する状況じゃん」
そうサムズアップした悠馬。
四面楚歌は興奮しないだろ、苦しいだろ、って言っても話は進まないだろうから、じゃあ、
「Sn、Sb、Te、I、Xeだな」
「SNSテルX」
「Iのヨウ素はI(アイ)な」
「SNSテル言うX」
「頑なにそれでいくんだな」
「ストーリーがあるから」
「でも悠馬はその後の展開というか、その後の元素何も知らないじゃん」
「でもこう繋げたほうが絶対やりやすいと思うから」
まあSNSのXでテルというキャラクターが何かを書くんだろうな。
「次は、Cs、Ba……」
本当はこの後にランタノイドの十八個が入る上に下の段に行けばアクチノイドの十八個があるんだけども、これはもう無視するか。
俺がこの下のランタノイドとアクチノイドが書いてある表を隠せば、悠馬は気付かないだろうし。
「Hf、Ta、W、Re、Os、Irまでかな」
「カスバー、ただれ、押し入れ」
「ずいぶん悪くテルは言うんだな、その女子のことをSNSのXで。言われて興奮していたんじゃないのか? まあ押し入れってどういう悪口かは分からないけども」
「いやこれはテルが言われて嬉しかった罵倒を記録するアカウントだよ」
「押し入れってどういう悪口なんだよ!」
「家が狭くて暗いとかそういう意味だよ」
「じゃあ結構キツイな!」
「でも興奮しているから」
何この後半、怒涛の言われた悪口の流れ。カスバー? カスのバーということ? Hfのハフニウムもハーフとして伸ばし棒扱いしてるの何か違うし、さりげなくW(ダブリュー)を”ダ”にしてんのはテクニカルで腹立つな。
まあいいか、
「Pt、Au、Hg、Ti、Pb、Bi、Po、At、Rnかな」
「長いな、でもまあ、パターハゲ、ちっ、Pabo、B、ポロ洗え」
「パターハゲってパターゴルフばっかりやってるハゲということで、ちっは舌打ちか」
「全部分かってくれるじゃん」
「でもPaboってなんだよ」
「これ知らねぇの? これはヘキサゴンでやっていたおバカのユニットの名前で、まんまバカという意味だよ」
「ヘキサゴンってクイズ番組の? 俺らの世代じゃないじゃん」
「親戚の兄貴がCD持ってて聞いた事あるんだよ、あれだぞ、木下優樹菜が所属してたんだぞ」
「それはすごいな、で、Bって何だよ、アリなのかよ、BiをBにするの」
「アリだよ、ブスって意味だよ、Bの戦場とかそういう小説あっただろ、確か」
「悠馬の知識の偏りなんなんだよ、で、最後がポロシャツ洗えってこと?」
「それはマジでそう」
「まあオジサンはポロシャツ着がちだけども、ゴルフやってるオジサンは特に着がちだけどもさ。でもあれだよ、急に悪口の羅列になってるじゃん。ストーリー展開させろよ」
「大丈夫、そろそろラストスパートだろ? 俺に任せてくれ!」
「別に俺はこの覚え方を世間一般に公開する気は無いけどな、任すもクソもないけどな」
俺の呆れとは反比例して充実感に満ちている表情をしている悠馬。
まあ悠馬が楽しいならそれでいいけども。
「次はFr、Ra、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn」
「ふらふらラフ、ドブすげぇ、ボー・ハッ・マイDSらしい」
「何これ、もしかすると会話してる?」
「御名答」
そう俺を指差してきた悠馬。
その人差し指の先端からは少しかわしてから一応思ったことを言うことにした。
「ふらふらラフはこんなに言われてふらふらになって、逆に自分で笑っちゃって」
「逆にではない、言われてふらふらになって、興奮しまくって嬉しくて笑ってる」
「で『ドブすげぇ』と女子から言われて」
「そうそう」
「ボーッとなってクラクラしつつ、ハッと笑って」
「そうそう、陽介の理解力ってすごいな、俺がサッカー部で孤立してきた時もさ」
「いや今そんなエモい昔話すんな、元素記号のアホ話だけでいい」
「分かった。陽介がそんなマジで取り組んでいるならそうする」
「全然マジじゃないけども、えっと、マイDSって自分のニンテンドーDSってこと? で、らしいって何?」
「マイDSはその通りで、自分のニンテンドーDSみたいな人生だなって」
「自分のニンテンドーDSらしい人生ってなんだよ」
「カスのゲームしかダウンロードしていないってこと」
「カスのゲームって言うな、任天堂やスクエニが作ったゲーム以外をカスのゲームって言うな。まあいいや、次でラストだな」
俺は上手くアクチノイドなどの欄を隠しつつ、
「Nh、Fl、Mc、Lv、Ts、Og、で終わりだな」
「贄踏むレベル、ツォォ」
「まあその女子は生贄を踏むくらいのレベルで罵倒してくれて、って言い方で合ってるかな? ……いや最後、奇声で終わるなよ、飽きたのかよ」
「最後奇声じゃない、強いという言葉に感慨深さを込めての『つよぉぉお』みたいな『ツォォ』だよ」
「そうか……いや! 後半ほとんど言われた辛らつな言葉集じゃん!」
「おれの欲望が強く出てしまった」
「オマエの性癖しか覚えられないわ!」
「これからもおれに強い言葉を掛けてくれ!」
そう語気を強めた悠馬。
いや、
「じゃあ優しく喋るよ、テスト勉強の続きをしましょうか。赤点を取ったら性癖どころじゃ済まない結果が待っていますよ」
「優しい語り口で辛辣な物言い……良い!」
「無敵かよ」
こんなバカな悠馬と一緒にいることはやっぱり楽しいんだ。
あの頃からしたら本当に考えられないな。
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