【干支という文化】

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【干支という文化】

・ ・【干支という文化】 ・ 「陽介、干支という文化知ってる?」  急に悠馬からそう言われた十二月三十日。  いや、 「高校一年生になって今更? 干支ってかなり有名な行事の類だぞ?」  すると悠馬は神妙な面持ちで、 「でもそれは、ローカルルールでは?」 「まあ日本や中国のローカルルールかもしんないけども」 「いや陽介のウチの」 「俺んちのローカルルールだったら広まり過ぎだろ」 「でも陽介んち、金持ちじゃん」  そう真剣な表情で言う悠馬。  いや、 「そこまでの大財閥とかじゃないから、干支はみんな幼稚園で習うよ」 「でもおれ、保育園だったからなぁ」 「そういうことじゃなくても、小学生にはみんな知ってるから」  一呼吸を開けてから、悠馬がこう言った。 「で、龍て」 「そのツッコミは小学生のうちに済ませておくんだよ」 「龍は無いだろ、あれか? 干支って文化作ったのおれか?」 「どんな記憶喪失だよ、もっと昔からある文化だよ。というか昔だからこそ、龍とかあるんだよ、多分」  すると悠馬が小首を傾げながら、 「えっ? どういうこと?」  と言ったので、俺は答えることにした。 「昔は妖怪や龍みたいなのと世界が曖昧でさ、何も知らなかったからこそいると信じられてきたんだよ」 「じゃあ何だ、昔のほうが面白いのか?」 「そんなザックリとした質問。まあ不思議なことに関して言えば、昔のほうがいろいろ言えて楽しかったかもな」 「でもさ、現代社会じゃないとおれと陽介は仲良くならなかったよな、まずサッカーという共通のヤツがあって、そのあといろいろ話していくと同じ趣味であるゲームがあってさ」  俺はちょっと笑ってしまうと、悠馬が、 「おれ! 結構真剣に言った!」  と言いながら、顔を真っ赤にし始めたので、 「分かってるよ、こういうの茶化すほうじゃないからさ、俺も。俺も悠馬と友達になれて良かったよ。サッカーの時はマジで何なんだとか思ったこともあったけどさ」 「サッカーの時の振る舞いはマジで謝罪しているけども、友達は”も”じゃない! 陽介の片思いだ!」  そう言って俺の前を歩き出した悠馬。  でもそうだな、そうやって俺の前を歩いてくれて有難うな、確かにサッカー部の時は俺が助けたかもしれないけども、それ以降のヤツはまあまあ悠馬に助けられているもんな。  俺の家が大金持ちだってイジられた時には『まず陽介自体を見ろよ!』と言ってくれたしな。俺の片思いでもいいや、これからもよろしくな、悠馬。
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