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【年越しジャンプ】
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・【年越しジャンプ】
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「カウントダウン、5! 4! 3! 2! 1!」
と悠馬が急に立ち上がり、声を上げ始めて、桃鉄のBGMが聞こえねぇ、と思っていると、悠馬はその場でジャンプをした。
「よっしゃ! 年越しジャンプ完了!」
こたつの中にいる俺は小首を傾げながら悠馬の顔を見ると、悠馬は上から俺を見下ろすように、こう言った。
「何で年越しジャンプしないんだよ!」
「いや逆に何で年越しのタイミングでジャンプするんだよ」
「おれ! 地球に居なかったんぞ! すごくねっ?」
俺は溜息をついてから、こう言うことにした。
「居るよ、大気圏内は全部地球だろ」
「そういう夢の無いことを言うなよ!」
「夢も何も、悠馬、新幹線でジャンプしてもそこは新幹線の中だろ、急に置いていかれるのか?」
「そんな桃鉄の歴史ヒーローに置き去りされた貧乏神みたいなことは無いよ!」
「だろ? だから年越しジャンプしても、そこは地球なんだよ」
すると悠馬はムッとしながら、またこたつの中に入って、俺に対して少し睨みながらこう言った。
「こういうのは行動起こした人間のほうが偉いんだけどな」
「じゃあさ、悠馬は年越しジャンプして地球に居なかったんだな?」
「そうだよ! 居なかったんだよ!」
「じゃあ俺は、十階に居たから」
悠馬はポカンと口を開いた。
俺は続ける。
「悠馬は地球に居なかったかもしれないけども、俺は五階に居たから」
「……いや、俺も十階に居たよ……居ただろ! 目の前に! ここ! 十階! 陽介のマンション! 陽介とずっと一緒に居た!」
「そうじゃないよ、悠馬は地球に居なかったんだろ?」
「えっ? どういうこと?」
そう前のめりになってきた悠馬に説明することにした。
「俺は十階に居たよ、悠馬は年越しの時に地球に居なかったけども、俺は十階に居た。この地球が始まってから、十階に居たヤツのほうが少ないんじゃないか? 悠馬はバカみたいに年越しジャンプしたけどさ、年越しジャンプするヤツより十階に居た人間のほうが希少だから」
「そんなことないわ! 年越しジャンプするヤツ、そんなにいねぇよ!」
「いいや、十階だぞ? 二階くらいなら年越しジャンプのほうが少ないかもしれないけども、十階はなかなかいないもんだぞ?」
「いいや! 十階のほうが多い! 歴代だろっ? 全歴史中だろ! 十階のほうが多いよ! 年越しジャンプのほうが希少!」
俺も何だかムキになってしまっていて、何かもうここは譲れないと思ってしまって、語気を強めて言うことにした。
「人間だけじゃないぞ、全動物を入れてだぞ。年越しジャンプしていた犬猫だっているだろうに」
「いや! 動物は年越しの概念を分かってないって!」
「でも偶然跳んでいたヤツもいるはずだ」
「偶然跳んでたヤツも換算するのかよ!」
「そりゃそうだろ」
悠馬は納得いっていない表情をしてから、急に何かを思いついたような顔をして、こう言った。
「俺は十階でジャンプしたぞ! 十階で地球に居なかったヤツは少ないだろ!」
「いや十階とかないだろ、地球に居なかったって話で。十階の地球に居なかったって話なら、それはもう十階に居るんだよ」
「まっ、まあ……そうか……」
肩を落として意気消沈した悠馬。
まあいいか、
「この話はこれくらいにして、悠馬、サイコロ振れよ。桃鉄の続き。チャタムベイに居すぎなんだよ」
すると悠馬はじっとりと俺のほうを見ながら、こう言った。
「……人間同士では妨害系カード使わない約束でやっていたけども……陽介にベビキュラーカード、使うぞ……」
沈黙。
次に口を開いたのは、勿論俺。
何故なら。
「年越しジャンプは有識者の特権だよな、希少価値すごいし、行動起こす人間って本当にできた人間だと思う」
「だろぉっ?」
所持金を吸われるベビキュラーカードは絶対に使われたくないから。
この言い合いってその程度のもんだから。
まあ俺たちにとって言い合いって日常茶飯事だもんな。
あんなぶつかり合いまでしたんだから。
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