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【書初めしよう】
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・【書初めしよう】
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「じゃあ書初めするか」
桃鉄が終わったところで、すぐさまそう言った悠馬へ、俺は、
「いいよ、一旦寝たほうがいいだろ。姉ちゃん使ってた部屋で悠馬寝ていいからさ」
「陽介のお姉ちゃんの部屋で寝ちゃダメだろ、浮気になっちゃう」
「なんないよ、悠馬の彼女もそんなことで怒んないだろ」
「怒る、だってケーキのセロハンを舐めるだけでもあんな怒るんだもん」
「それとは微妙に違うだろ」
俺はゲームを片付けて、自分の部屋へ行こうとすると、
「いや! 書初めしよう! それで勝負しておれが負けたら素直に陽介のお姉ちゃんのベッドで寝る!」
「書初めする目標は達成できる上に、勝負ってなんだよ。眠すぎてアホになってるじゃん、書初めの件は嫌な手法なだけだけども、勝負が本当にアホ過ぎる」
「そんなことない! 全然アホになっていない! IQ百万円になってる!」
「IQは預金残高とかじゃないから。じゃあいいや、さっさと書初めして寝るぞ」
俺はコピー用紙の紙二枚と筆ペンを持って、こたつの前にまた座った。
「筆ペンは一本しかないから交互な」
「いいだろう!」
悠馬は語気を強めた。
まず俺がコピー用紙に”龍”と書こうとすると、
「今年の抱負を書こうよ」
と悠馬が言ってきたので、
「まあいいけど」
と言いながら俺は字を書いた。
『楽しい一年』と。
すると悠馬が吹き出して、
「いや! 小学生みたいだな!」
「こういうのが一番良いんだよ、変に目標とかも書かない。目標書くと気合いが入り過ぎて空回りするかもしんないし」
「じゃあ陽介、楽しい一年が空回りするかもしれないよ」
俺は少し考えてから、確かに、と思ってしまった。
たまに悠馬はこういうラッキーパンチを繰り出すな、と思っていると、悠馬が、
「じゃあ次はおれの番ね!」
と言って、なんと俺が書いたコピー用紙を持ったので、
「悠馬! まだ乾いていないからひっくり返すな!」
「いやひっくり返さないよ、続きを書くんだよ」
そう言ってから、俺の『楽しい一年』の上に『陽介と』という文字を書き、一息ついてから、悠馬は、
「これを、空回らせます」
「空回すなよ、というか俺を巻き込むなよ」
「ほら、陽介も上に『悠馬と』って書けよ!」
何だか期待に満ちた瞳でこっちを見てくるので、仕方なく、書いてやることにした。
すると悠馬がバンザイしながら、
「完成だ! そんなにおれのことが好きなんて負けたよ! 寝てやるよ!」
そう言って悠馬はスキップしながら、おれのお姉ちゃんの部屋へ入っていった。
いや、いやいや、悠馬に書かされたんだろ、と思いつつも、まあ悠馬が先に書いたし、いいかと思って寝ることにした。
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