星降る夜に…

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「ひなたぁ?」 2階から私を呼ぶお母さんの声がした。 「やばっ、涼之介とりあえず今は帰って。明日必ず連絡するから。」 「わ、分かった。」 涼之介は急いで庭に出ていった。その間、お母さんがゆっくり階段を下りてくる足音が聞こえていた。私は真っ白な頭を整理し、とりあえずソファに横になって寝てるふりをした。 ガチャっとリビングのドアが開いた。 「あれ、ひなた!?」 「う、うーん、あれ、お母さん。」 「あなた、ここで何してるの?」 「ご、ごめんなさい。喉乾いて水飲みに来たらそのまま寝ちゃってた。」 「もう!夏とはいえ風邪引くわよ!部屋で寝なさい。流星だって迷惑よねぇ。」 お母さんはゲージの中で尻尾を振っている流星の頭を優しく撫でた。 …あいつの演技力は何なのよ。 私はお母さんの背中越しに流星を睨み付けてから、部屋に戻った。 数時間後、いつも起きる時間にセットされたスマホのアラームが鳴った。勿論、あれから寝れるはずもない私はすぐにスマホを手に取りアラームを切った。 …1回目の朝だ。 「ふぅ、結局どうしたらいいのか何も思い付かなかったな。」 私はいつも通りの朝を過ごした。ほんとは全てを家族に話したかったが、信じてもらう自信も無かった。流星はいつもの通り、景太に尻尾を振りながらご飯を貰っていた。 「…ひなた、あなた大丈夫?」 お母さんは朝ごはんが進まない私を心配していた。 「うん、大丈夫よ。」 私はお母さんを心配させないために、パンを食べ進めた。 「じゃあ部活行ってきます!」 「あんまり無茶しちゃ駄目よ。」 私は、流星を睨み付けてから部活に行くために玄関を開けた。 「よぉ、ちゃんと寝れたか?」 家の前で涼之介が待っていた。 「…寝れるわけないでしょ。てか、いつから待ってたのよ。」 「ちょっと前から。俺もサッカー部の練習だし。…ねぇ、ひなた、昨日のあれは夢じゃないんだよな。」 「私も夢であればいいのにってずっと思ってるんだけど、この夢から目覚めない。…現実なんだって。」 「ひなたは俺が守る。」 涼之介の不意な言葉に私は足を止めた。 「…ありがと。でも、相手は100億の宇宙人よ。それもあと1日しかない。涼之介に出来ることはないわよ。」 「確かに俺には術はないかもしれない。可能性があるのはひなたの犬だ。奴を使うしかない。」 「流星を…。」 …そう言えば、流星は私に逃げろと言っていた。でも何処に行けばいいのよ。 「…ひなた?」 「ねぇ、今日部活休める?てか部活なんて行ってる場合じゃないし。もうちょいしたらお母さんもパートに出掛けるから、私の家に戻りましょ。」 涼之介は頷いた。 お父さんは仕事、お母さんはパートに出掛けた頃に私と涼之介は家に戻り玄関を開けた。 「あれ?」 リビングから留守番をしていた景太が顔を出した。 「景太、ちょっと2階の部屋に行ってて。私は涼之介と大事な話があるから。」 「あ、涼之介兄ちゃん、なんか久しぶり。」 「景太くん、久しぶりだね。お邪魔します。」 「大事な話って?」 景太は素直に2階に行かなそうだった。私は仕方なく景太の肩を掴み目をじっと見つめながら言った。 「この地球に関わる大事なことなの。」 「…何言ってんの?」 景太は私を小馬鹿にした目で見た。 「…ま、そりゃ素直に信じるわけはないか。…流星は?」 「流星ならいつもの場所で寝て…あれ?」 景太はゲージを見たが、居るはずの流星の姿が無くキョロキョロと辺りを見回した。 「…逃げた?」 私が呟くと、涼之介は私の腕を掴んだ。 「捜しに行くぞ。」 私は涼之介に手を引かれるまま玄関を飛び出した。 「…お姉ちゃん、何しに帰ってきたんだ?」 景太は閉まる扉を見つめながら呟いた。 「ちょ、ちょっと涼之介、捜すったって何処を?」 「何か思い当たる場所無いのか!?散歩の時に流星が変な反応する場所とか。」 「ええ?そんな急に言われても…あ!」 「な、何か思い出したか。」 「流星を最初に拾ってきた河原とか?」 「それだ!」 涼之介のニヤッと笑うと河原に向かって走り出した。 「りょ、涼之介!ちょっと待ってよ!」 涼之介と私は段々と距離が開いていき、ついには曲がり角で涼之介の姿が見えなくなってしまった。 …何よ、夜中はお姫様抱っこまでしてくれたのに、先に行っちゃうなんて。 私が域をきらしながら河原に着くと、先に着いていた涼之介が河原を徘徊するように流星を探していた。 「涼之介!流星いた?」 「…いない!逃げたな。」 …逃げた?って何からよ。 私は涼之介の言葉の意味を探しながら河原に向かう斜面を駆け下りた。すると、身体が突然引っ張られる感覚で背丈ほどある草むらに倒れ込んでしまった。 「いったぁ。なんか急に引き寄せられたような…」 私が目を開けると、正面に流星が仁王立ちしていた。 「り…」 流星は私の口を肉球で塞いだ。そして、静かにしろとジェスチャーをしてきたので、私はコクンと頷いた。 「一緒に逃げるぞ、ひなた。」 「…え?」 「この河原には俺が地球に来た時に使った宇宙船がある。それに乗って2人で逃げよう。」 「でも…私の家族とか友達とか…涼之介とかは。」 「残念だが、俺の宇宙船は人間サイズだとひなた1人が限界だ。お前だけでも助かってほしい。」 流星はそう言うと、地面を前足で掘り始めた。 「あれ?ひなた?おーい、ひなたぁ!」 草むらの向こうから、涼之介の声が聞こえた。再び流星が静かに!とジェスチャーをしたため、私は小さく屈んで身を潜めた。 「あれ~?ひなた何処に行ったんだぁ。…☓◯▲@□◆…。」 「っ!?」 …涼之介の言葉が急に、流星の母星の言葉みたいに変わった?それに声もエコーがかかったように変な感じがする。 「◎♯!▲▽◆□!」 …だ、段々近付いてない? 私は急に怖くなり身体を震わせた。
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