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今まで会話は必要ないと思っていた。 それは煌牙、忍星、煌希、大牙、羽生が居てくれたから。 5人が学校に行っている間、杏珠はそれを淋しく感じていたのだと、漸く分かった。 「たまご、たまご、たまご」 ダイニングキッチンに移動して直ぐに、踏み台を持って来て冷蔵庫を開けた杏珠。 卵を次々と取り出すから、ボウルで受け止める。 「プリンにはあまり卵は使わないよ」 「うぅ~とね、たまごまきにするの」 「なら烏を呼んで来ようか?」 「うん」 油を使う時は、烏が居ないと使えない。 それは烏の不器用な優しさ。 開いたままのダイニングキッチンのドア。 踏み台から下りた杏珠は、『こうやくーん』と呼びながら走って行く。 それがおかしくて、クスッと笑う。 子供達から『烏』と呼ばれるけど『煌弥君』と呼ばれる烏はらしくない。 それでも、杏珠が楽しいのなら悪くないと思えた。
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