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流し台の所に立ち、何かを作り始めた貴島百合。 傍に行き『お手伝いします』と言った私。 『今から、クッキーを焼くの』と言った貴島百合は、手際良く手を動かしている。 それが、とても不思議だった。 プリンやゼリーなら、子供達に作ってあげてるけど、クッキーが家で作れるとは知らなかった。 そう思う私は、貴島百合に言われた通りに、バターをボールに入れ、泡立て器で混ぜる。 「砂糖を入れるから、こねてね」 貴島百合は、そう言うと、ボールに砂糖を入れた。 「お母さん、こねるとは?」 意味が分からず、何気なく問い掛けた言葉。 「嬉しい。お母さんって呼んでくれてありがとう」 『貴島百合』と言葉にするのは、余りにも失礼だから『お母さん』と言葉にしたけど、こんなにも心が暖かくなるとは、思ってもいなかった。 「私がこねるから、玲ちゃんは見てて」 その言葉に『うん』と答え、ボールと泡立て器を貴島百合に渡す。
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