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少ししてから、もう1度『ありがとう』と言った貴島百合から離れた。 「クッキーを作る途中だったわね」 涙を拭いながら、そう言った貴島百合は、何かを吹っ切れた感じに思えた。 「玲ちゃん、そこにある牛乳を、大さじ1と1/2入れてくれる」 その言葉に『うん』と答え、牛乳を少しずつ入れる。 ボールの中の物を、貴島百合は泡立て器で混ぜていく。 子供達と一緒に何かを作る事は、良くある事だ。 でも、お母さんでもある貴島百合と一緒に何かを作れる事が、素直に嬉しいと思った。 「小麦粉は、こうやって振るってから、入れるのよ」 『うん』と答え、ヘラで混ぜていくのをジッと見ていた。
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