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貴島組から少し離れた場所で、空車のタクシーを見つけた私。 片手を上げると、タクシーは私の目の前で停まったから、それに乗り込み、美里が隠れ家にしている18階建てマンションの住所を運転手に告げた。 無駄に探し回るより、美里に力を貸してもらう方が早い。 予想していた訳じゃないけど、出かける前に無意識にポケットに入れた1万円札が、まさかこんな風に役にたつなんて思っていなかった。 それに、烏の考えが分からない以上、煌蓮総本部に戻る気持ちはない。 「お客さん、着きました」 その言葉が聞こえ、ポケットの中から1万円札を出し、運転手に渡す。 『釣りは、いらない』と告げてから、タクシーから降りた。
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