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「なんでカミシロ山なんだ……。あそこは嫌だ……。怖い……怖い……!」
ガタガタと身体が震え出すナツ。
(あそこには行きたくない……。あそこには行ってはいけない……。オレを呪わないで……。オレは呪われたくない……!)
恐怖がナツを支配する。
だけど、
『万夏。秋乃に何かあったら守ってあげて。あの子、頭で考えるより身体が先に動いちゃうから、その時は万夏が止めてあげてね』
昔、来々美に言われたことを思い出す。
『万夏は秋乃のお兄ちゃんだけど、ずっとお兄ちゃんじゃなくて良いの。言い付けを守らない秋乃なんて放っておいて良いわ。あの子、痛い目見なきゃ分からないんだから』
いつも優しかったけれど、時々見せた冷たい表情をする来々美。
アキが知っているかは分からない来々美の一面。
「姉ちゃん……。アキが帰って来ないんだ……」
目を閉じて、記憶に残る来々美に話し掛けるナツ。
「カミシロ山へいるみたいなんだ……」
ナツはゆっくりその場から立ち上がる。
「……ごめん、姉ちゃん。あいつを放っておけるほど、オレは無情にはなれないや……」
ナツにとって、アキは双子の妹。
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