4.五月闇に、忍び寄る

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 北海道一賑わう空港は、観光客でごった返していた。  道内から飛行機で移動した私は、羽田からの依澄さんと時間を合わせて待ち合わせをしていた。 「依澄さん!」  彼の姿を見つけて、手を振りながら呼びかける。数日会っていなかっただけなのに、久しぶりみたいに感じてしまう。  走り寄ると、勢いのあまり腕に飛び込んでしまう。そんな私を抱き止め、依澄さんは嬉しそうに笑っていた。 「今日は、いつもより積極的だな」 「だって、嬉しくて!」  人目も憚らず、抱き合ったまま素直に口にすると、彼は口角を上げる。 「そんなに俺に会えるのが嬉しかった? それとも、美味いものをたくさん食べるから?」 「どっちも、です! 凄く楽しみにしてたんですから」  それを聞いて彼は目を細めると私の手を取った。 「俺も」  当たり前のように、繋がれた手の指を絡め合う。言葉は無くても、心が通じ合っているような気がして、幸せで満たされる。そんなことを思いながら、歩き出した。  依澄さんが手配してくれていたレンタカーに乗り、目的地に向け出発する。  いつもはビルの群れの隙間を、縫うように車を走らせているが今日は違う。広々とした景色は、地平線まで望めそうだ。それが、アメリカの景色に似ていて、どこか懐かしい。  依澄さんもそう思ったようだ。車の中では、自宅のあるニューヨークから、私の住む町までの数時間のドライブの話を聞かせてくれた。  そうしているうちに、徐々に景色は都会めいてくる。  今はもうお昼を過ぎていて、明日は15時台の飛行機に乗らなくてはならない。たった一日しかないが、せっかくだから美味しいものを堪能したい。あれこれリサーチして、北海道の定番だけど、これは食べておきたいというものを二人で考えてきた。  まずは、ジンギスカン。  テラス席もある、開放的な店で食べるお肉は最高で、勝手に顔が笑顔になってくる。依澄さんも、もちろん堪能していた。  お腹を満たしたあとは観光。夕食までの間、二人で有名な観光スポットをあちこち見て回った。 「あれっ?」  ふと、さっきも同じ観光地にいたカップルが目に入り、小さく声を漏らした。 「どうした?」 「えっと。さっきも同じ人を見かけた気がして」 「……どの人?」  依澄さんが顔を寄せ、小さく尋ねる。教えようとするが、もうその姿はなかった。 「うーん……。気のせいだったみたいです」  そういえば、さっきも同じツアー会社のガイドを見かけた。きっとその中の客なのだろう。たまたま同じコースを周っているだけ。そう思い直し、話題を変え彼に話しかけた。
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