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ラブリー・チャーハンガール
僕にはどうしても不思議なことがある。
小学校の頃からの幼馴染で、同じマンションに住んでいる菜々香が、ここ最近急に押しかけてくるようになったことだ。
確かに、小中学校の時はしょっちゅう彼女を家に招いて勉強を教えていた。しかし高校、大学はバラバラの学校である。偏差値もやりたいことも違ったので、仕方ないと言えば仕方ないことだろう。
それに合わせてなんとなく疎遠にもなっていた。時々エレベーターや階段、通路で顔を合わせることがあるくらい。僕もバスケ部で忙しかったし、彼女もバレーボール部の練習でばたばたしていたというのもあるだろう。何より、思春期で多少なりに互い意識してしまっていたのもある。まあ、元々友達以上の何かではなかったし、どうしようもないことなんだろうとは思っていた。
それが、だ。
「龍也。あたしに勉強教えろ」
「……えっと」
それが、ここ最近急に家に押しかけてくるようになった。
確かに大学生になってからは高校時代ほど忙しくはなくなったし(サークルや部活に入らなかったため)、両親も共働きで家にいないことが増えたといってもだ。
「……勉強って。僕とお前じゃ、勉強してる内容違うじゃん。学校も学部も違うんだし」
僕がそう返すと、彼女は不機嫌そうに鼻を鳴らして言うのだ。
「うるせえ。一般教養科目なら教えられるだろ。あたしは英語が苦手なんだ。教えろ。お前昔から得意だろ」
「はあ……」
こんなかんじ。
確かに彼女は昔から勉強全般が苦手で、僕は特に文系科目を得意としていた。小中学生の頃はよく教えていたのも事実だけれど。
――なんで、今になって?
首を傾げるのも、無理ないことだろう。
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