奇跡は繰り返される

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 絶対に秘密だよ。  僕、君に会ったことがあるんだ。  多分君は知らないかもしれない。  だから、君と出会ったことを話させてね。  君は、傘を持っていなかったね。  僕は悪いけど雨に濡れる君にーーーー  きっと一目惚れをしていたみたいだ。  だから君の近くでトラックが走ってきた時。  走り出すのが遅れてしまったんだ。  ごめんね。  もう少し僕が早く走り出していれば、君は助かっていたかもしれない。  …それができなかったのなら、せめて君と一緒に死にたかった。  そうすれば少なくとも、天国できっと一緒になれたのに。  なのに、神様は残酷だ。  あんなに綺麗な君が、この世からいなくなって。  君を助けることができなかった僕は、奇跡的に生きている。  どうして。  どうして死なせてくれなかったんだ。  いくらか後悔しても、神様を恨んでも。  揺るぎない事実が、僕を苦しめた。  でもあの日。  横断歩道をよちよちと歩く子犬。  その子犬を見た途端、わかった。  それが、君だった。  僕は君ーーーー犬の姿の君目掛けて走った。  幸い、トラックは気づいて止まった。  僕は君があの日の君だと信じた。  そして君に〝キセキ〟と名前をつけたんだ。  君はもしかしたら、忘れているのかもしれない。  でも、僕は君といつかまた会えると信じてる。  犬じゃなくて、同じ人間の姿で。  その時は、君に今まで言えなかった告白をさせてくれないか?  だからそれまで、  もう少しだけ、待っていて。  …なんて。  君にどんなに語りかけても、君には僕の言葉は、伝わらないよね。  だって君は、犬なんだから。  
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