KHM153 / 序章 灰雪と銀狼のエピローグ

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 *****  三年前、この国は革命を迎えた。  国を二分する争いは王女率いる革命軍が勝利し、王族のほとんどは処刑台の(つゆ)と消え、私腹を肥やした貴族もほうぼうに逃げ去った。人々は彼らの名残が残るものを嫌って次々と取り壊したが、唯一、美しき花々の咲き乱れるビルツ邸の裏庭(バックガーデン)だけは残された。  霜で覆われた東屋(ガゼボ)格子棚(パゴラ)。土がむき出しのままの花原(メドウ)。寒風に揺れる高木(ツリー)低木(シュラブ)。そして、芽吹きのときを待つ野生薔薇(オールドローズ)。年に一度、国中から選ばれた魔女たちによって守られてきた裏庭は、春待つ今だけは記憶喪失の少女と、過去に囚われた青年のもの。  これは、そんな二人が魔女たちと過ごす四季の記録。
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