KHM153 / 序章 灰雪と銀狼のエピローグ

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 *****  コーヒーと紅茶を用意して戻ってきたルーを待っていたのは、へらへらとソファで笑うアルヴィムだけだった。何事かと問うまでもない。部屋を飛び出したらしいアンナとすれ違ったし、男の頬には真っ赤な手形が残っている。  アルヴィムが呑気(のんき)に言った。 「いやあ、女心って難しいなー」 「また何か余計なことをしたんですね」 「またとは失礼な。俺のやることにはすべて意味があるんだよ」  ルーは答えず、アルヴィムにコーヒーを押しつけた。紅茶はアンナの分だが、さてどうしたものか。追いかけたところで、面倒な絡みをされそうだ。  斜め上の妄想で盛り上がるアンナを思い出す。急に面倒くさい気持ちになったし、実際それは微妙に顔に出ていたのだろう。コーヒーを一口飲んだアルヴィムはのんびりと言った。 「追いかけるがいいよ。なんだかんだ言って、お前は昔からアンナ・ビルツのことが好きだろう」 「殴られたいんですか」 「わぁ、相変わらずお前も俺に辛辣(しんらつ)だ」アルヴィムはからからと笑ったあと、目を細めた。「まぁ、いいさ。狩人の処遇は俺に任せて、お前はアンナ・ビルツを守りなさい。大切な人を、二度も失いたくはないだろう?」  ルーはため息とともに、手元の紅茶を見やった。  ()いだ水面が冬の日差しを弾く。淡い輝きのまぶしさに目を閉じて、静かにうなずいた。 「はい、分かっています。先代」
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