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もうすぐ11周忌
幸奈と出会って、約一年が過ぎようとしていた。
粉雪が降り積もる季節が、また巡りくる。
「もうすぐ親父の11周忌か」
陶芸室で誰に聞かせるわけでもなくぼそりと呟くと、幸奈が聞きつけ
「え? ……まさか、あの日がお父様の命日?」
と、驚きの声を上げた。
「『あの日』って……?」
「あ……」
幸奈は「しまった」という風に唇に手を当て、そのまま黙ってしまった。
(「あの日」……)
俺は、どうしても幸奈の言う「あの日」が気になった。
幸奈は、俺の知らない何かを知っている。
そこで俺はふと、思い出した。
一人で仕事をしている姿を「決して見ないで」という彼女。
そこに、何か秘密があるような気がしてならない。
俺はどうしても、彼女が一人で作業している所を見たくなった。
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