怪談・雪山姥

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怪談・雪山姥

「じゃあ……、俺、今日は成績処理があるので職員室に行くね」 「はい。後はお任せください」  二人きりで過ごす時間が長い所為か。  氷の微笑と思えたあの顔が、いつの間にか優し気な笑顔に見えていた。そんな彼女の笑顔から、俺も目を離せなくなっていた。 (だけど、幸奈は「あの日」を知っている。親父の命日を知っている)  俺は、確かめなくてはという思いに駆られた。 (幸奈は、雪女なのかもしれない……)  彼女を騙すかのようで後ろめたさはある。  だけど、俺は校舎の職員室に行ったと見せかけて、こっそりと陶芸室に戻ってきた。  聞こえてきたのは……  ドゴーン! ゴガーン!  陶芸室が揺れそうなほどの破壊音。 (一体、何をして……?)  恐る恐る覗くと、幸奈が一人、鬼のような形相で歯を食いしばり髪を振り乱している。あの重たい金槌を頭上よりも高く掲げ、「ふんっ」と勇ましいかけ声と共に粘土を叩き割っていた。  それはまるで、山姥のよう。  その時に俺は思い出した。  雪女の別名に「雪山姥」がある。  幸奈は、やはり雪女だったのだ。
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