2人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
懐かしの実家
◇◇◇
やがて父の命日がきた。
降り積もった雪をものともせずに、スタッドレス軽四駆は懐かしい我が家を目指す。
助手席には愛しい婚約者を乗せて。
「ねえ、幸奈」
俺はとうとう疑問を口にした。
「君は親父の命日を知ってたね。それどころか初対面の俺さえも知っていた。それってどうして? 教えてくれないかな?」
困ったように助手席に佇む幸奈が、
「……聞いたら、後悔するかもしれませんよ」
ぼそりと忠告をした。
「しないよ」
俺は誠心誠意答えた。
幸奈が雪女だってかまわない。
怪力だって素敵だ。金槌を豪快に振り下ろし粘土を一撃で粉砕には驚いたけど、一生懸命仕事している姿に惚れ直した。
猫舌だって可愛い。
どんな君でも好き。
俺の気持ちは変わらない。
君が何をしていてもいい。
何者でもいい。
だから、教えてほしんだ……『あの日』のことを。
「……ちょうど11年前です」
決心したのか幸奈が重い口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!