懐かしの実家

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懐かしの実家

◇◇◇  やがて父の命日がきた。  降り積もった雪をものともせずに、スタッドレス軽四駆は懐かしい我が家を目指す。  助手席には愛しい婚約者を乗せて。 「ねえ、幸奈」  俺はとうとう疑問を口にした。 「君は親父の命日を知ってたね。それどころか初対面の俺さえも知っていた。それってどうして? 教えてくれないかな?」  困ったように助手席に佇む幸奈が、 「……聞いたら、後悔するかもしれませんよ」  ぼそりと忠告をした。 「しないよ」  俺は誠心誠意答えた。  幸奈が雪女だってかまわない。  怪力だって素敵だ。金槌を豪快に振り下ろし粘土を一撃で粉砕には驚いたけど、一生懸命仕事している姿に惚れ直した。  猫舌だって可愛い。  どんな君でも好き。  俺の気持ちは変わらない。  君が何をしていてもいい。  何者でもいい。  だから、教えてほしんだ……『あの日』のことを。 「……ちょうど11年前です」  決心したのか幸奈が重い口を開いた。
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