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厳しい冬を生き抜くために
粉雪舞う高3の冬の日。
木の葉がすっかり落ちた殺風景な山の中腹で、今月食べる分の大根や白菜を収穫していた時だった。
「あー! やられた!」
親父が蔵の裏で叫んでいた。
なんだろうと見に行くと、そこに点在するのは獣の足跡。そして無残に荒らされた畑。
「鹿?」
俺が聞くと
「いや。蹄の大きさと間隔、それに土を掘り起こした跡があるから、猪だろう」
残念そうに親父がぐちゃぐちゃに掘り起こされたうっすら雪化粧をした畑を見ながら言った。
「忌々しいなぁ」
自然が多く残る山には、当然、鹿や猪も居た。
山の麓には本格的な農業を営んでいる人もいる。そこはハイテクに電気柵が張り巡らされて、動物たちも近寄れない。家庭菜園の延長線上でやっている高い柵を張り巡らしただけのローテクな我が畑に、厳しい冬を生き抜く為に動物たちはやってきていた。
鹿は高い柵を飛び越えるし、猪は人力で作った網を破りやがる。
親父の推測通り、柵の一角に大きな穴が開いているのを見つけた。
とりあえず俺が修理している間に、親父は罠を買ってきて柵の内側に仕掛けた。古式ゆかしく、踏んだら挟まれるタイプだった。
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