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有村颯太の仕事は大変
「どんな感じのお仕事なの?」
「陶芸を教えているよ。体に麻痺のあるお子さんが多いから、俺が器の形を作っておいて、半乾きにした器に生徒さんがヘラで削ったり絵を描いたりして作品に仕上げるんだ」
病気や事故の為に手足に麻痺があったり、長時間の授業を受けるのが難しい生徒達が陶芸室に来る。負担なく学習してもらうためには、ある程度の下拵えが必要だ。
彼らに「粘土を捏ねろ」「ろくろを回せ」というのは無理。だけど言い換えたら、ある程度準備しておけば作品を作りあげることができるってことだ。
俺が考えついた作戦は、鋳込みという作り方だった。
石膏の型にどろどろの液体状にした粘土を流し込む。一晩おいて型から抜くと、美しい丼状に固まっている。ドロドロ粘土を一晩で固めたものだから、まだ水分は抜けきっていない。ヘラや竹串で軽くさすだけで、好きな模様を描けるのだ。
生徒たちは喜んで作品作りに勤しんだ。
体が不自由で通常のやり方ではできないことが多い生徒たち。彼らの作品を作り上げた喜びは大きい。
湧き上がる生徒の笑顔に、俺まで嬉しくなった。
(先生になって、良かった)
と思える瞬間だった。
……前日からの準備は大変だったけど。
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