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「綺麗だ」とパパは言った。
「幸せになりなさい」ママは涙をこらえながら言う。
今日はわたしの、わたしたちの二十歳の誕生日で今日私は幸せな花嫁になる。
わたしの双子の片割れであった妹の恋人と。妹の名前を奪って。
妹はわたしの名前でお墓の中だ。
2年前のあの日。高校の卒業式。
名門の進学校に通っていた妹と底辺高校に通っていたわたし。
パパとママは同じ日の卒業式、ふたりとも妹の式に出たいはずなのに、パパは無理をしてわたしのほうに出ると言った。
わたしは
「うちの高校には親なんか来ない」と断った。パパは最後まで来ると言ったけどもし親が来るなら私が卒業式に出るのをやめる、と言ったら渋々同意した。
その代わり式が終わったら待ち合わせをして食事と記念写真を撮ることを約束させられた。
最悪。あの名門高校の制服の隣に、デザインだけは素敵な私の制服がならぶのか。
なんの公開処刑だよ
卒業後、わたしはフリーターになる。妹は有名な大学に進学する。
妹は父の取引先の御曹司と二十歳になったら学生結婚する。もっと先でも良いと父も妹も言うが、御曹司は1日も早く妹を「愚かな姉」から引き離したいらしい。
姉のわたしは妹の優しさを無碍にし妹を疵付ける極悪人らしい。
わたしは妹に危害を加えたことなどない。口やかましくお節介をやいてくる妹に
「わたしのことはいいから放っといて」と言ったことはある。
わたしが進学しようがすまいが、それはわたしの意思で。わたしはわたしで、お金を貯めていつか特殊メイクを学びに海外に留学したいと考えていた。誰にも言ったことはないけど。
そんなことを知らない妹は
「勉強二人で頑張れば同じ大学に行ける」
「双子なんだから能力は同じはず」と押し付ける。
「放っといて」
そういうわたしの態度に涙ぐむ妹。
その妹の涙をみてわたしに激怒する御曹司。
お願いだから放っといて
あなた達の中からわたしを消して。
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