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止めてくれ。
心の中では叫んでいたが、口には出さなかった。出せば、笑われるだけ。あいつらに喜ばれるだけだ。
顔に、体に、雪玉が次々と当たる。
雪合戦という名前の一方的な暴力。こちらは一人。相手は七人。
負けるのはわかっていた。ただ、一つでいいから、やり返したかった。太田を狙って雪玉を投げる。
だけど、太田は他の子の後ろに隠れ、出てこようとしない。
雪玉を作ろうとしゃがみこむと、小石入りの雪玉が降ってくる。もちろん、太田の指示だ。
集中攻撃を受けていると、雪を払う暇もなく、溶けた雪が首筋から中に入って冷たくなる。
雪なんて嫌いだ。こんな街なんて嫌いだ。
鼻をすすりながら、雪玉をつかんだ。
「お前ら、いつまで遊んでいる。風邪ひくぞ」
「はーい、そろそろ帰ります」
先生の声に太田が応えた。
先生は仲良く遊んでいると思っているんだろう。
それでも、雪玉が止まったことに感謝した。遠巻きに見ている同級生たちがコソコソ話をしている。その前を虚勢を張って通った。
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